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From Research Inquiries

2009年01月16日

WebFLISの知識⑧―急速に広まるグローバル・ロジスティクス(兵站)

 昨年11月、会計検査院が装備品の輸入価格算定に新たな指摘をしたことで、防衛省はもちろんマスコミ各社も米国連邦兵站情報システム(FLIS・フリス)やそのインターネット版であるWeb FLIS(ウェブ・フリス)を始めて取り上げた。【本文公開中】


 
 
■はじめに
             
 昨年11月、会計検査院が装備品の輸入価格算定に新たな指摘をしたことで、防衛省はもちろんマスコミ各社も米国連邦兵站情報システム(FLIS(フリス))やそのインターネット版であるWeb FLIS(ウェブ・フリス)を始めて取り上げた。このことは大変喜ばしいことであり、その結果、弊社のFLISやWeb FLISに関するニュース・ブログへのアクセス数が急増した。またマスコミからの取材や防衛省からの問い合わせが多数あり、関心の高さを物語った。
 
 一方、世界の兵站情報システムの潮流はNCS(NATO Codification System)を取り込むことにあることは意外に知られていない。このNCSは米国のFLISを原流としており、NATO加盟国はもちろん非加盟国である日本も運用することができる装備品情報システムとして急激に拡大しているのである。
 
 しかしながら日本はいまだに参加していない。世界の兵站情報システムが統合化し、一元化しつつある現在、このままでは日本だけが取り残される可能性がある。このことがどのようなことなのかを改めて考えてみたい。
 
 
■PACS(パックス)について

 PACSについてはたびたびこの紙面で紹介をした。PACSとは太平洋地域カタログ・セミナーのことで、その言葉のごとく太平洋に面する国々の国防兵站担当者が参加して装備品の類別・識別の標準化を相互に推進する研究会組織となっている。現在参加国は米国やカナダなどを含めて18カ国からなり、日本はまだ正式に加盟しておらずオブザーバーとして参加しているにすぎない。

 このPACSは米国の主導で構築された北大西洋条約機構(NATO)によるグローバル兵站情報システム(NCS)の導入を前提とした研修会である。言い換えれば、NATOもしくは米国のアジア地域における国際協調活動の一端ともいえよう。また、PACSに参加することでNCSを導入していないPASOLS諸国(注1)にその利点を紹介することに役立つとしている。

(注1)PASOLSは太平洋地域上級士官兵站研究会の意味で日本も参加。
 

■何故今、NATOなのか

 そこで何故今、NATOなのかという疑問がわいてくるが、近年の日本において元首相や前外務大臣がNATOで講演を行なっていることは記憶に新しい。またそのことはNATOのホームページでも紹介されており、NATOからは好意的に扱われていることがよくわかる。また一方ではNATOの高官が度々日本を訪れていることも報道されている通りである。日本の国際貢献度は多国籍軍を指揮するNATOにとって大変喜ばしいことであったに違いない。

 しかしながら兵站の分野においても、相変わらず法的な見解や政治的な意味合いから非加盟諸国としての参加表明もできないでいるのが実情である。NATOでは日本が兵站情報システムの共同運用に参加することが法的に抵触することで政治問題化することを憂慮している、との見方が一般的である。

 上で述べたとおり、米国は早期に自ら構築した装備品システムFLISをNATOに公開した。これはいわゆる湾岸戦争時代に米国が体験した「お粗末なNATO兵站システム」のテコ入れ策であり、またその結果、自国装備品の輸出貢献にも繋がったことは報告されている通りである。米国は日本がNATOと協調することを願っていることはDOD高官が述べている通りである。


■PACSでは韓国が指導的な立場で活躍している

 細かいことは後述するが、PACSに参加しているアジア諸国の中ではTIER2(後述)である韓国が既に指導的な立場にあるといえる。すなわち、韓国の兵站システムは既に米国を中心とするNATOシステムと統合化しているわけで、あらゆる装備品はこれらの諸国と共有化され運用されている。その上もっと重要なことは韓国装備品がこの共通システム(NCS)に登録されて自国で運用することはもちろん、他の国々でも取得されるということである。これは韓国の装備品業界にとっては魅力ある市場となる。

 また、韓国は現在他のアジア諸国がシステムを導入する指導的な立場であるという。NATOにあるNCSのシステム検索サイトでは既に韓国語による装備品情報が立ち上がっており、登録した者は誰もが情報の取得ができるようになっている。あるマスコミ報道によれば米国は現在同盟国である日本より実務的であるといっているのが何よりの証拠ではないか。
 
 
■中国が意を翻して参加表明をした

 かねてより中国は、日本と同様にPACSに懐疑的でありオブザーバーとしてのみ参加をしてきた。また現在においてもなお、オブザーバーである。しかし、以前は正式加盟については自国のシステムと大きく異なり、PACSに正式加盟し、NCSを取り込む意思に欠けていたことが報告されていたが、一昨年に開かれた研修会では、一転して参加に意欲的となり周囲の国々を驚かせたことが報告された。

 いったい何が中国にあったのかは不明であるが、その後昨年の研修会では韓国が中国を指導しているとの情報もあり、いずれ近いうちに中国が正式に加盟することが予測される。そうなると世界的な兵站情報システムの共同運用はおろか、いずれは中国製の装備品が登録され出回ることになるだけに各国にとっては複雑な心境ではあろう。


■そもそもグローバル兵站情報システムとはなにか。

 ここで改めて、世界の主要国が運用を表明しているNCSとは何かを改めてそのパンフレットから紹介しよう。

 NCSは米国製のFLISのグローバル版ともいえるが、その情報には参加国のみが運用できる非公開情報が含まれている。NCSに参加する諸国は、共通の基準と技術に従って自国の防衛カタログ品目にNSNを割り当てる。

 各国のコード化事務局(NCB)はすべての品目にNSNを割り当て、同じNSNの品目はすべて構成、構造が同じように同一性がなされている。NATOのNSNは米国のFLISと同じ13桁の数字によって表わされており、また国別表示がなされている。現在、約700万件の米国NSNと約900万件のNATO諸国等のNSNによって構成されており、その品目はプロペラ・ブレードから宇宙船、および石鹸入れから洗濯機まで広範囲となっている。NATOによればこのNCSには既に56カ国が参加しており、参加各国は装備品の取得のために当システムを運用するだけではなく、自国の装備品を登録することに傾注しているという。


■TEIR1(ティアワン)とTIER2(ティアツー)

 簡単に言うとTIER1とはエントリー・レベルを指しており、NCSシステムの理解と使用が認められ、TIER2とはTIER1国を審査したうえでNATO諸国と同様にNCSシステムの運用、すなわち自国でNSN登録が認められることをいう。TIER1とTIER2ともに非NATO国としてNATO委員会(AC/135)による審査のうえ正式承認が必要となる。

 ちなみにアジアのTIER2国はアメリカ カナダを除くと、現在オーストラリア 韓国 シンガポールおよびニュージーランドの4カ国でこれらの国々では自国の装備品も含めたNCSデータベースの運用を行なっている。


■ところで日本はどうするのか

 ところで日本は集団的自衛権の解釈問題など、政治的な意味合いでNCSに参加表明はしていないと報じられている。しかしこのことが今回指摘された輸入装備品の不当価格の遠因ともなっていることは意外と知られていない。もし日本がNCSに参加していたなら、各国協調の中でこのようなことは起こりえない。

 またそのうえ将来にわたり日本の装備品が登録できず、当業界が育たない原因ともなっていることはほとんどの関係者が知らないことである。このことはわが国の秀逸な資材や部品、需品などの装備品の世界市場での運用機会損失を意味し、逆に高額で問題の多い他国品を購入しなければならない背景となっている。

 現在AC/135(NATOのNCS委員会)によればNCSへの参加国は急増しており、地域的にはアジア・アフリカ諸国を中心に全世界を目指しているという。また現在においても世界最大のデータベースであると自負しているが今後装備品の概念を拡大することで民生品の取り込みも考えているという。また国連(UN)の取り込みも検討されていると報じられている。

 わが国の装備品は多くのレベルにおいてTIER2を数年で獲得できる実力があるだけに早期に解決すべきであるし、また産業界にとっても大いに期待されるものとなろう。現在、日本の兵站関係者は日米同盟を軸に展開を検討しているふしがあるが、このような世界の潮流を見失うと将来にわたって禍根を残すことになる。日本においては、FLISやNCSはもとより兵站(または後方支援)は地味であるがゆえにマスコミも含めて知られていない部分が多い。しかし兵站を制するものが生き残ることはもはや定説になっている。
 
 
■弊社からの報告書

 永年FLIS研究を通じて防衛省や防衛装備品業界にWeb FLIS運用サポート・サービスを展開している弊社では、ここで改めて「FLIS(米国連邦兵站情報システム)とNCS(NATO兵站情報システム)」と題して過去からのニュースや調査報告を抜粋してわかりやすく解説した報告書を作成した。興味のある方はご要望ください。

 また弊社では関係省庁と協力して日本が早期にFLISを公式に運用し、NCSに正式参加できようにこれらの動向をできる限り調査・報告し、提言していく予定である。
 
 
 
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