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2017年08月15日

【MIL-STD-810G(1)の常識】

MIL-STD-810.png

― 試験室における環境応力試験規格 -

「米国防総省の超堅牢試験規格MIL-STD-810Gに準拠」と言ったうたい文句で、世界中の民間企業は車載用機器や通信機器、ノートパソコン、スマホなど昨今のヘビー・デューティ化する商品戦略のため、耐衝撃性や耐振動性などの強化を進めてきている。今日、民間製品は軽・短・薄への画期的な技術革新と共に、更にまた、さまざまなフィールド・ユースをも凌駕しようとしているのである。そして、これら企業は、こぞってMIL規格準拠品としてMIL-STD-810の研究に余念が無い。そこで、ここではMILスペック・ユーザのために、本来のMIL-STD-810を最新版MIL-STD-810G(1)を通して紹介しよう。一般ユーザの方々にも是非ご一読いただければ幸甚である。 (DCメール 2017年8月15日 No.443)



■MIL-STD-810G(1)の常識

MIL-STD-810G(1) 「環境における工学的考察と試験室試験」は、従来からのMIL-STD-810Gを大幅に改正した。MIL-STD-810Gは約800ページからなり、2008年に発行されたが、2014年にChange Notice(変更通知)が発行され、MIL-STD-810G(1)として1000ページを超す大幅な内容の増加と
なった。また情報によれば、米国防総省(DOD)では新たな改訂が計画されているという。

MIL-STD-810G(1)は表題の通り、防衛や航空宇宙向けの装備品のための温度、湿度、高度、振動、衝撃など29分野における過酷な環境条件に即した試験室による試験規格であり、その概要は次のように認められている。

「この規格は、装備品のもつ諸環境への応力(抵抗力)が、その生涯(ライフサイクル)の全段階を通じて及ぼされる影響を考察するためのものであり、設計や試験仕様は課していないことに注意することが重要である。 むしろ、装備品システムの成果(パフォーマンス)要求に基づき、現実的な装備品設計と試験方法をもたらす環境との調製(テーラード)プロセスについて言及している。」

即ち、装備品の成果要求、言い換えれば装備品の性能要求に応じた設計と試験方法について言及している点と、あくまでもラボ(試験室)における試験規格であり、一般のフィールド・ユースなど諸環境において起こりうる条件下においては論じていない点を注意しなければならない。

しかしながら、MIL-STD-810G(1)の元となるMIL-STD-810は、その55年にわたる長い歴史(初版は1962年)の中で、装備品の技術革新や環境の変化といったものを巧みに取り込んでいくとともに、その変容を遂げてきたが、一方民間製品にとっても、時代が求める高堅牢性や高信頼性のために大いに利用され、一般市民に役立ててきたことも事実であろう。

MIL-STD-810はMILスペックが適用される通信機器や計測器、コンピュータなど、防衛や宇宙航空機器など精密装備品における環境下における運用性をうたってきたが、民間製品のうち特に堅牢さを売り物にして、従来製品との差別化として「MIL準拠品」なる製品が出回るようになったことは、ある意味必然的と言えよう。

ところで、MIL-STD-810G(1)では、さまざまな環境要因は装備品の耐用年数にわたって、特定で有害な影響を与えることを考慮しなければならないとして、取得計画や装備品の変更、ユーザとの相互運用性のニーズなどを、全ての装備品に適用する必要があるとする、共同開発の機会を提唱している。

この最新版は、装備品の環境応力(抵抗力)の影響を考察する目的のために用意されたものであり、具体的には取得契約や工学的な試験についての成果(性能要求)に基づいて、その環境との調製プロセスについて言及している点が注目されている。また、最新版は3部構成からなっており、各部では装備品等が設計、試験および評価における環境条件をいかに調製するかが謳われている。

第1部(環境工学的考察)では、衝撃や振動等の環境における応力のあるシステムを取得するための規準に合わせたアプローチを展開している。また環境工学の観点からユーザのニーズを満たす装備品を取得するための基本的なプロセスを図解している。

第2部(各種試験)は、個別の環境において調製されたプロセスとして不可欠な部分となっている。調製(テーラード)では、環境についての応力データや臨床検査方法などが含まれている。各方法に含まれる環境データは補助となるが、その耐用年数を通じて遭遇する環境応力を定義するために排他的に使用すべきではないとしている。また特定の材料とその定義されたライフサイクルに合わせた分析や試験を支援している。

第3部(環境条件ガイド)は、気候条件の現実的な検討のための計画指針を提供し、世界中での様々な気候地域でのライフサイクル全体で使用される装備品の開発、試験、および評価などを取り上げている。それはこの規格が意図した使用の分野で、そのライフサイクルを通じて発見される可能性が高い環境条件下での、適切に実行する装備品開発の目的を達成するのを助けることを意図
している。

このように見てくると、MIL-STD-810はその長い歴史の中で、MILスペックが歩んできた半強制的な試験方法のあり方から、最新版MIL-STD-810G(1)のように、成果主義としての試験手法を取り入れてきており、上記の通り試験仕様そのものは取り入れていないことに気づくのである。これは、SAEやASTM等に見られる民間規格の試験手法を取り入れることで、無駄な時間と費用を省き、結果(成果)を求めることに他ならない。

また、一方では世界中での様々な気候地域での装備品のライフサイクル全体で使用される開発や試験および評価などを取り上げている。こういった装備品の様々な環境における応力に対する研究は、装備品のライフタイム全体を通じて、各段階で適切な調製を行うように計画され、まさに環境における工学的見地からは、一部の隙も無い考察を展開しているのが、MIL-STD-810G(1)であるといえよう。DODの計画では新たな見直しがあると報告されているが、時を経て紹介したい。

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