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2016年10月01日

【(解説)装備移転のカギ握るNATOカタログ】

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― 日経ビジネス記事を深読みする ―

日経ビジネス9月26日号は、特集記事「ニッポンの防衛産業」の中で、一般誌として初めて「NATOカタログ制度」を紹介しました。折から防衛省の来年度概算要求に名を連ねたからです。また、同オンライン版では【防衛装備国際化のカギ握るNATOカタログ】と題した詳細記事を配信しました。これらの記事は、共に筆者への取材を通じて掲載されたものです。そこで今回は同オンライン記事を引用しながら、収まり切れなかった関連情報をお伝えします。なお、下記は同記事が掲載された日経ビジネス・オンライン版URLです。 ( DCメール 2016年10月1日 No.422)


http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/092300019/092700004/?rt=nocnt



■装備移転のカギ握るNATOカタログ

日経:NATOカタログとは何ですか
服部︓戦闘機などの防衛装備を構成するボルトやタイヤなど、詳細な部品レベルにまで⾄る広範な国際標準のデータベースシステムです。欧米の軍事同盟である北⼤⻄洋条約機構(NATO)加盟国から始まって、現在は主要63カ国(準加盟を含む)がその製品を登録しています。これまでに3000万〜4000万点が登録されています。
(解説)
ここでいう登録件数とは部品など装備品の数を示しています。世界中のメーカーが参入するNATOカタログはNSNという共通の装備品番号制度を採用しています。このNSNの数はNATOによれば1800万種類に上るとされ、さらにひとつのNSNには数種類の同等性能をもつ代替品が連なり、この数が3000万以上という膨大な数字とされているのです。なお、米国製のNSNが約800万件と数のうえでは圧倒的に多いのですが、その他装備品登録の多い国々では100万件近くを登録しています。


日経:NATOカタログの狙いは何ですか。
服部︓各国はコスト削減のため、それぞれの判断のもと、装備の共通化を進めています。その前提として部品情報の共有化が必要になります。使⽤⾔語の異なる国々が膨⼤な部品情報を正確にやり取りするため、13ケタの固有番号を割り振って管理しています。具体的には⽣産国や使⽤国、スペックや技術情報などが掲載されています。
(解説)
13ケタの固有番号をNSN(NATOストックナンバー)といい、各国がその部品を取得する際に識別できるように関連した各種情報、例えば特性値や使用国、メーカー、代替品情報等がデータベースに埋め込まれています。利用者はこういった情報をもとに、調達します。NATOはNMCRLという名のインターネットによる閲覧ツールを用意(有料)して、誰でも地球上のどこからでも簡単にアクセスできるようにしています。


日経:NATOカタログに対する⽇本のスタンスはどうですか。
服部︓今のところ⽇本は、データを参照することだけ可能な「Tier1(準加盟)国」にとどまっており、国産装備は基本的にNATOカタログに載っていません。Tier1国が⾃国の装備をNATOカタログに登録したい場合、「Tier2(本加盟)国」に依頼し、Tier2国を通じて登録してもらう必要があります。その過程で⽇本はTier2国から意図的に、必要以上に様々な技術情報の開⽰を強いられるかもしれません。こちらからお願いしてカタログに登録してもらう⽴場であるため、不慣れな企業の場合、弱みに付け込まれる可能性もあります。
(解説)
NATOカタログでは、 Tier1(ティアワン)国はNATO諸国やTier2諸国が登録した情報を参照することができますが、自らの情報を登録することはできません。だから登録する場合は相手国にお願いするか、NATOに代理してもらうことになります。実は、ここに必要以上な情報提供や、また開示することを求められる場合がありますが、(できないことを)きちんと説明することが必要です。また、そのためには事前に必要な手立てを施しておくことが重要なのです。Tier2(ティアツー)国になると自国が登録するため、このようなことは基本的に起こりません。


日経:NATOカタログに対する⽇本のスタンスはどうですか。(続き)
服部:⾃国の技術情報を不⽤意に他国に開⽰することなく、対等の⽴場で国際マーケットに参⼊するため、Tier2国となることが極めて重要です。NATOカタログを採⽤する63カ国のうち、Tier2国は39カ国。⽇本が潜⽔艦の受注に失敗したオーストラリアも、これを受注したフランスもともにTier2国同⼠です。防衛装備品の海外移転を強化している韓国のほか、マレーシアやシンガポールなどもTier2国。実務を考えるのであれば、こうした実態を知っておくべきです。NATOカタログに対応することで防衛装備を輸出しやすくなる半⾯、輸⼊しやすくなる⾯もあります。このため、国内利害関係者の⼀部がやや抵抗感を持っているのも事実です。
(解説)
記事内容に校正漏れがありましたのでここで訂正します。NATO国はTier2国ではないため、Tier2国の数は現在11か国です。従ってオーストラリアはTie2国、フランスはNATO国に分類されます。Tier2国は「NATO国のみ」という権利以外はすべてNATO国と同等の扱いを受けます。またTier2国になることで、装備品の輸入が増えることを心配する向きがありますが、これは個別における調達問題であり、単純にTier2国になると輸入品が増えるわけではありません。むしろTier2国になると、代替国産品の増加が見込めることになると思われます。


日経:防衛省が2017年度概算要求で「NATOカタログ制度に係る国際会議の開催やシステムの整備」に2億円の予算を計上しました。
服部︓実務に直⾯し、⽇本国内でも産業界を含めてようやく理解が深まってきたと⼿ごたえを感じています。防衛省の予算はNATOカタログに対応したシステムを整備するなど、能⼒的な⾯でTier2国になる準備を進めておくということです。あとは意思決定に踏み切るタイミングだけの問題とみています。NATO関係者と私が意⾒交換した感触では、NATO側は広く門⼾を開いており、⽇本の参加を⼼待ちにしています。⽇本は最新技術をつぎ込んだ主要装備の開発には熱⼼ですが、泥臭いけれども実は⼤事な後⽅業務やルールなどへの目配りが⾜りません。
(解説)
わが国には戦前の輜重時代から後方支援に対する考え方やそのルール作りにおいて他国に後れをとっています。NATOカタログの前身である米国カタログは戦後まもなく、1945年に時の大統領ルーズベルトによって装備品管理手法が制定され、1953年には欧州に渡り、英国や仏国をはじめとする5か国と装備品共有化、システムの共通化が成し遂げられ今日に至っています。現在、NATOカタログに登録される1800万件ものNSNとその元になる代替品は3000万件を超えます。参加各国とも防衛予算が頭打ちである現在において、その装備品取得計画に無駄は許されないのです。装備品の共通化、統合化は種類を削減し、コストも削減し、またサプライチェーンの可視化に貢献します。


日経:防衛省が2017年度概算要求で「NATOカタログ制度に係る国際会議の開催やシステムの整備」に2億円の予算を計上しました。(続き)
服部:NATOカタログは、中国も興味のあるそぶりを⽰すなど、防衛装備に関する情報戦を繰り広げる場になっています。国際マーケットに参⼊するのであれば、様々な情報を収集できるよう⼒を⼊れておかないと、⽇本の防衛産業を守れないのではないかと懸念しています。
(解説)
少し前に、米国防総省標準化総会に出席した際、韓国が出席していたましたが、わが国はジャパンデスクさえ置かれていませんでした。またNATOを含め、欧州各国では相変わらず中国の参加に期待感を示しています。しかしロジスティクスの世界において、今重要なことは、単に争いごとに加担するためでは無く、その救済や自然災害からの救助など、その後方支援活動の範囲は広がる一方です。NATOカタログには国際連合(UN)における支援活動のための幅広い一般汎用品も重要な“装備品”に数えられているのです。

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