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2015年09月30日

【NCSの世界よもやま話】

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-NATOカタログ制度(NCS)に集う国々ー

今回は少し肩の力を抜いてNCSの世界よもやま話をしましょう。米国で生まれた装備品カタログ制度(FCS)はその後ヨーロッパに渡り現在のNATOカタログ制度(NCS)になりました。NATO諸国は多数の異なる民族と歴史そして異なる言語を用いていますがNCSを軸としたロジスティクス体制の共有という点においては一致団結しています。それはヨーロッパ大陸に根差した集団的自衛体制下においてまさに異なる国々の身の丈にあった理念ではないかと考えます。 (DCメール 2015年10月1日 No.398)


■NCSの世界よもやま話


NATO(北大西洋条約機構)が主催するNATOカタログ制度(NCS)はもともと米国の連邦政府カタログ制度(FCS)に端を発しています。カタログ制度と言っても単なるカタログの寄せ集めではありません。時の大統領ルーズベルトは平時と同様に有事の際も安心して装備品を運用できる後方支援体制の強化を提唱したのです。ルーズベルトは第2次世界大戦の終結と同時に有事の際の維持管理が重要と考え、いついかなる時も装備品の補給が可能となるような体制づくりを進めたのです。

そして米国は一国にとどまらずにその後1953年のロンドン会議で提唱し英仏独オランダ、ベルギーといった諸国と同一システムの運用協定を結びました。そして現在ではすべてのNATO加盟国のみならずアジア、アフリカ、中東、南米など世界の62か国が加盟する世界共通にして最大の装備品管理システムとしてNCSの運用と維持管理を行うまでに成長しました。(数字はNATO調べ)

現在NCSに登録されているNSN(後述)は1830万件、メーカパーツは3570万件、メーカ数は260万社もの膨大な情報が登録されるまでに膨れ上がっています。また世界でNCSを利用する人は2800万人にも上るといわれています。(数字はNATO調べ)

2011年、日本もティア・ワン(T1)としてNCSに加盟しましたが本格的な運用はこれからです。T1というのは自国装備品の登録はできず、そのかわりに他国の装備品情報を取得して運用することができる言わば片肺飛行です。今後、日本が自国装備品をNCSに登録するためにはティア・ツー(T2)になるための審査を受けなければなりません。そのためにNCSシステムを導入する準備をしなければならないということです。しかしそうすることで日本の装備品がNCSに登録され、他国の装備品と互換性をもち他国が自由に日本の装備品を使えることになるわけです。

日本もこれから海外諸国への装備品輸出や他国との共同開発の機会が増えることが予想されますが、一方では国連(UN)等の平和維持軍(PfP)への参加が増えることが見込まれ、そうした際も安心して他国と共通化した装備品を運用することが可能となるのです。

ところで世界の62か国が共同して一つのシステムを運用・維持管理するためにはルールが必要です。まず最も大切なルールは使用言語で、これは国際公用語である英語とフランス語が使われます。NATOの基盤であるるヨーロッパの国々は多言語社会です。それぞれの国は母国語を使いますが、こういった欧州共同体では他国語も話せないと不都合で、人によっては5か国も6か国もの言葉を話します。中でも英語はビジネスをするうえでだれでも必要とされ、ヨーロッパの人々は英語を勉強して身に着けているので分かりやすい英語ですがアクセントに特徴があり聞き取りにくい面もあります。

ところでNCSシステム上ではもはや言葉の壁は無くなりつつあります。それはシステムのIT化によりすべての使用言語は自国語に翻訳することが可能となりました。これにより英語やフランス語が十分にわからないユーザでも安心してシステムを運用できるようになったわけです。

NCSの最大のルールは加盟する国が登録する装備品はすべてNSNという共通した13桁の番号を使う必要があります。例えば同じ電球なら日本製でも、米国製でもフランス製でもすべて同じNSN番号でなければならないというルールです。これによりすべてのユーザはこれらの電球を交換品として使用できるようになり世界のいつでもどこでも調達し利用できるということになりました。

しかしもうひとつのルールとは装備品の共通化の程度は自国の裁量に任されるという点です。運命共同体とはいえ、その国にはその国の法律があり、また経済状態も異なり優等国もあれば弱小な国も存在します。そこでNATO諸国ではNCSに登録する装備品はNSN化(共通化)するのであって、その国がもつすべての装備品を共通化するというのではありません。NCSではその国の裁量で装備品登録しまた共通化するとしているのです。

また登録する際にNCSに提供する装備品データについてはその国の法律で規制されるため各国で異なるということです。例えば英国などは自国の法律により装備品特性は一切提供していません。また多くの国では自ら専用の装備品データベースを構築してNCSデータベースと区分けをしています。このようにNCSでは代替品情報として各国の装備品が一堂に掲載されますが、それぞれの提供する技術データの管理区分が異なることがわかるように構築されています。

また装備品の価格情報などはその顕著たるもので、各国の経済状態が異なれば価格も異なります。よってNCSでは価格情報は公表しません。ユーザは必要に応じて登録されたメーカや機関に問い合わせをすれば教えてくれることになってます。こういった自由性、自由裁量性の元で同一システム
を運用するというのがNATOの集団的自衛権に対する理念なのです。

ところでNATOの方針としてNCSへの加盟はいかなる国に対してもその門戸が開かれているとしています。ですから近年では他の地域への急速な広がりを見せています。なかでも近年南米や中東、アフリカ諸国の加盟が相次いでいますが特に中国やロシアそして韓国やオーストラリアの動向は日本にとっても見逃せないところです。

例えば中国は永年オブザーバーとして日本と同様に地域の定期会合に出席をしてきました。そして数年前には加盟を表明しNCSを導入すべく研究を重ねてきたのですが、いまだにNCSには加盟していません。すでにT2国入りを果たした韓国(後述)によれば中国のNCS導入に対していろいろ助言してきたようです。NATOもまた中国のNCS加入は望ましいと考えていますが政治的な意味合いからも今後とも不透明であると言わざるを得ません。

一方ロシアはすでにT2国としてNCSの一員でしたが昨年のクリミア編入以降、NATOとの対立が表面化して現在はNATOによりサスペンド(中断)されています。ロシアがAPECの議長国であった際に参加各国に対して装備品ではなく一般製品に対してもNCSのような共通した枠組みを作るべきであると主張したことは有名な話です。

ところで韓国はNCSを導入して装備品輸出を伸張させた成功国としていろいろなケースで取り上げられています。日本よりはるかに昔からNCS加盟の研究をしてT1からT2国となりアジアの盟主として後進国の指導をしてきました。またNATOでの定期会議でも多くの発言と実行を繰り返し近年では韓国産練習機を東南アジア諸国に大量に輸出するなど装備品輸出で世界の有数国になる計画があります。韓国企業による在日米軍機の複数年度保守契約落札は日本でも耳新しいニュースとして衝撃的でした。

オーストラリアは昔から英米との繋がりがあり、早くからNCS導入国として特にアジア太平洋分科会において主導的な立場をとってきました。NATOに言わせるともっともNCSに熱心なT2国です。今オーストラリアがもっとも熱心であるのは自国の産業基盤の確立と輸出の拡大です。昨年いち早くF-35の一番機を納入しそのサプライチェーン構想に名乗りを上げました。また米国航空機メーカとの契約のもと自国産業界を組み込むことでアジア太平洋地区のSCM構築に熱心です。今オーストラリア政府がもっとも積極的に活動しているとNATOでは見ています。

最後に米国はすべてのF-35装備品にNSNを登録する作業をしています。もともとF-35はPBL契約といってLM(ロッキードマーチン)社を主体とした民間企業グループがすべての契約責任において装備品の維持管理をメーカ品番号で行なっていますが、要求元である米軍を管理する国防総省(DOD)はいざという時のためにNSNを付与することを決定しました。F-35が戦闘地で修理・保守される場合、民間企業による物流は米国法により禁止されるからです。そしてNSNが付与されれば米国政府が代わりに物流を行うことが可能だからです。このようにNSNは米国やNATOを中心に着々と各国に取り入れられ、またそれらの国々ではNCSを媒介として共同運用や代替品活用を促進させています。

ところで日本ではようやくNCSの導入に対して本格的な研究が始まろうとしていますが、集団的自衛権の行使が現実となった今、各国との共通装備品の運用を可能にするためにNCSの弾力的な運用構想を早期に実現してほしいものです。

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