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2015年06月01日

【装備品輸出と共同開発】

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-NATOカタログ制度からの論点―

わが国政府は防衛装備移転三原則への転換により矢継ぎ早に相手国との間で装備品輸出や国際共同開発などの新規案件を呈上している。これによりわが国の防衛装備品産業界は国内ではなく世界を相手とする企業戦略を求められることになり、今までの鎖国状態から万能薬のごとく問題を解決するとはいかないまでも朗報となるのかもしれない。しかし一方では今後益々技術基盤の維持やコストダウンを強いられるなど企業努力が求められることになると思われる。そこで今回はこの新しいわが国の取り組みをNATOカタログ(NCS)の観点から考えてみたい。(DCメール 2015年6月1日 No.390)


■装備品輸出と共同開発に求められるもの

NATOカタログ(すなわちNCS)とはNATO加盟国とその援助国から形成される各国装備品の類別情報を標準化したデータベースであり、既に世界の68か国で採用されている世界の共通装備品デー
タベースである。NCSとは基本として各国が調達した装備品や企業情報を自国で管理し相互に提供しあうものである。何故このような機構が必要かというとロジスティクスの観点から言えば各国は共通した装備品を取得・運用することで最も重要な即応性(レディネス)を手に入れることができるからである。


例えば某米国企業が製造する航空機部品の類別情報があるとする。そこにまったく同じ特性をもつ部品が韓国(ティア2)にて製造されNCSデータベースに反映されると米国製のものと同じ番号(これをNSNという)が付与される。これにより同じNSN情報の下に米韓2つの企業の製品が並ぶことになりお互いの製品が代替で使用できることを意味する。このことは例えば在韓米軍では米国製品を遠いところから調達するよりも韓国品を現地調達する計画が立ち、いわゆる即応性に対処できるということになる。これは韓国がティア2であるゆえに可能である。


そこでこのことをわが国に当てはめてみよう。残念ながらNCSにおけるわが国の立ち位置はいわゆる韓国より低いティア1であるため情報提供ができない。そのためNATO加盟国やNCS参加国はNCSを通じてわが国装備品情報を知り得ないし、調達の選択肢に入れることはできない。即ち他国においてNCSでの日本製品は互換性を把握できず、相互運用性、即応性という概念下にない。


エンドアイテムのような装備システムの輸出や他国との共同プロジェクトは国家的戦略として成り立ちやすく、情報発信もしやすい。しかし他国においてそれら装備品を形成する個々の装備部品が維持整備能力の向上に必須であるにもかかわらず情報提供できないのではコスト・ダウンはもとより技術基盤維持の解決にはならないのではないかと思うのである。


わが国の状況で他国と共同開発および輸出を行うとNCSの観点からどうなるのかを2つのケースで考えてみたい。

ケース1. 輸出
A国へ某装備品を初めて輸出することになった。A国がNCSを導入している場合、現在のわが国ではNCS類別情報を提供することができない。そのためA国はわが国の代わりに輸入装備品情報の類別業務を行わなくてはならず、A国は装備品の構成品情報をわが国企業に要求し維持管理をするのである。すなわちA国はわが国の代わりにわが国企業の装備品情報を管理して、データ更新しなければならない義務が発生するのである。

ケース2. 共同開発
NCSを導入しているB国との共同開発を行うこととなったわが国だがNCSに適った情報提供をする権利がない。しかしB国は共同開発による装備品並びに両国の装備構成品情報を一元的にNCSに沿って登録しなければならない。そこで上記同様、各装備品情報をわが国企業に要求し、B国はNCSに従ってそれらの情報を維持管理、更新する義務があるのである。


これらをもってわが国にとっては負担はないと言えるだろうか。


ケース1.において、わが国が更なる他国への販路の拡大を考えた場合A国の登録した情報で次の国は運用することとなろう。しかしそれは正確で最新の情報なのだろうか。またケース2.の場合、例えば恣意的にブラックボックス化した構成品の情報管理を他国に任せてよいのだろうか。またケース1や2に言えるのだが、構成品まで含めて各企業が適切な情報を他国に与えることに関する調整・統制をどのようにするのだろうか。


企業にとっては自社の装備品情報こそは固有の技術情報であり知的財産に関与するものとして自国ならともかく他国に管理させるわけにはいかないものではないか。


これらの状況下で、もしわが国が自らが情報提供できる立場(いわゆるティア2)になればこれらわが国企業が他国へ登録のための情報提供を行う必要はなくなり、一括してわが国類別局(NCB)が管理し、正確で最新な情報を定期提供することができるのである。


また他国においてもわが国から提供されるNCS情報を閲覧し品質管理や即応性に準じた調達計画に盛り込むことができる。またわが国企業の製造能力を正当に評価できることになるのである。そしてそれはわが国企業の維持整備分野における新規事案に発展することや調達計画の選択肢の増加につながるものと考える。


保守整備事業(MRO)にかかる総コストは開発のそれより多い。わが国のエンドアイテムの輸出また他国との共同開発事業は響きこそいいが今や世界各国に共通したNCS装備品データベースの現状をみるにつけわが国はこういった新しい枠組みをどのように捉え、また世界の潮流とどうすり合わせていくのかを十分に論議していく必要があると感じる次第である。

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