公共スペック・公共規格 Consulting & Support Company アラート、最新版管理、調査、翻訳、取寄せサービス
TOP > On Topics > 【ダッシュ30への熱き想い】

On Topics

2015年04月01日

【ダッシュ30への熱き想い】

multi_flags.jpg


-わが国防衛装備品の将来展望-

NATO(北大西洋条約機構)が提唱する世界共通の防衛装備品番号(NSN)には世界各国の「国別コ-ド」が織り込まれている。わが国のコ-ドは「-30」( ダッシュ30と呼ばれる )である。しかしダッシュ30を付けた装備品は存在しない。それはわが国がこの装備品体系を導入していないからである。しかし今や国連や海外諸国から国際的な装備支援が求められるなか、わが国のダッシュ30装備品も満を持しており、そのためには可及的速やかにNSN番号体系への移行が求められている。今回は昨年NATO防衛装備品システム(NCS)研修を終えた筆者が多数の海外の知己を得て改めて世界の装備品事情やわが国の課題を俯瞰する。 ( DCメール 2015年4月1日 No.386)


■ダッシュ30への思い入れ

わが国のダッシュ30防衛装備品を海外諸国で使用してもらうためには装備品番号をNSNに移行しなければならない。NSNとはNATOストックナンバーのことで米英など世界の39か国(注)が自国で登録した装備品に付ける世界共通の13桁による番号体系のことをいう。(注)2015.3.13付NATO情報による


13桁のうちの5桁目と6桁目が装備品の登録した国を示す国別コードとなっている。例えば英国は99、フランスは14、ドイツは12という具合であり米国は00と01をもっている。お隣りの韓国は37、オーストラリアは66,そしてわが国は30という番号が割り振られている。


これはどういう意味かというと、例えば装備品に印字された13桁のNSN番号を見るだけでどの国で登録されたのかが分かる仕組みである。またNSNにはTIRという製造メーカや特性そして代替品情報などの装備品データが記録されており後方支援情報システムとして世界中の国家、政府で運用している世界標準の防衛装備品データベースとなっている。


現在わが国でも海外諸国からのNSN装備品を供与品として使用しているがそこには海外諸国のダッシュ番号が付与されている。あるものは輸入品であり他はライセンス品として国内で製造されたものである。今後わが国がダッシュ30装備品の登録業務を行うようになると国産エンドアイテムのNSN装備品として結果的に幅広い活用が見込まれるものと思われる。


既にわが国の高品質なNSN装備品が輸入エンドアイテムのライセンス装備品として実証済みであることに加えダッシュ30装備品がもつ独自の設計能力や製造能力といったものが世界に周知できることはわが国の装備品輸出に大きなインパクトを与えるものとなろう。


ところでNSNは米国の装備品識別のもとに生まれた番号制度であるが現在ではNATO加盟国である英国、フランス、ドイツや豪州や韓国、イスラエルなどNATO以外の国々もすでに登録しており各国が共通した後方支援体制を展開する仕組みが作られている。


NATOはわが国に対してもNSNへの移行を望んでいるがわが国は永年にわたる武器輸出3原則等の法的な拘束により移行に踏み切れなかった。ダッシュ30を付与したNSNを登録し取得するためにはNATO加盟国の同意を取り付け、また各国共通の装備品登録システム(NCS)を構築する必要があり簡単ではない。しかし今更言うまでも無くこの枠組みを疎かにするとわが国の装備品輸出に支障をきたすばかりでなく諸外国との装備品の相互運用性も損なわれる可能性がある。


例えばこういうことである。わが国の同盟国である米国とそのNATO諸国および準同盟国であるオ-ストラリアなどのNATO援助国ではNSN未登録の品目を調達する場合、新たに登録する必要がある。一般的には要請に基づき輸出製造国側が登録業務を請け負うが、登録能力のない場合には輸入国が製造元へ品目情報を要求の上、登録作業を行うことが強いられる。


これら諸国間では共通化された体系を採用することが義務付けされておりそれにより即応性、効果的運用性、コストダウンなどが図られているからである。また情報漏えいや国家間の言語不一致によるNSNの品質低下への懸念なども払しょくできるものと考えられている。


このシステムはNATO装備品システム( NCS)と呼ばれもともとは米国政府が採用してきたFLIS(フリス)をNATO諸国を中心に現在まで39か国に拡張させたもので1700万を超える膨大な装備品デ-タベ-スとなっている。


そしてこれらの国々では登録されていない装備品を新たに使用する場合は自らが登録する策を用いなければならない。


例えばNCSにはわが国メーカが製造した装備品が8万2千件登録されている。これらは米国や英国など27カ国が自国で使用するために登録したものである。これら装備品のNSNにはその国の国別コードが付与されている。元来これらの装備品はわが国メーカにより製造されたものでダッシュ30装備品としてわが国がNSN登録すべきものであろう。


ところで読者は何故今NCSなのかと言う疑問があるのかもしれない。NATOとの協力関係は第1次安倍内閣の2007年にわが国の首相としてはじめて表明して以来のことで、さらに昨年に入って2度目の訪問で更なる協力体制が強化された。


ロジスティクスの観点からいえばわが国は米国だけとの関係を強化するのではなく米国が推奨するNATOとの関係を通じて海外諸国との協力関係を築いていくことが大変重要ではないかと思う。


わが国がダッシュ30NSN装備品の登録制度に移行するためにはまずNATOの承認を受け、Tier2( ティアツ- )と呼ばれるNATOと装備品同等国にならなければならないが、そのためには海外諸国との装備品システムの共通化が不可避である。


そのうえこれら海外諸国も同様に他国との相互運用性やコスト削減という重要課題に直面しておりNCS装備品体制の採用とNSNの取得という洗礼を受けていることを認識しなければならない。


現代のロジスティクス概念は即応性に如何に対処できるかにかかっている。それはエンドアイテムのダウンタイムを如何に軽減できるかにある。また平和維持軍やいわゆる海賊退治など海外諸国との共同歩調をとるうえで装備品の共通性や相互運用性を如何に可能にするかが最も重要である。


もちろんNSNを未採用の海外諸国も少なくないが、このことについてNATOはいずれNSNに一元化されると楽観視している。事実この2,3年においては急速に多くの諸国が移行を果たしている。


まさに共通化による恩恵すなわち即応性の維持とコスト削減の必然性にあるといってよい。世界中に拡散するテロ行為や隣国との軍事衝突を限られた予算内で最適に対処するためには同盟諸国との装備品共通化は不可避であると考えている。


たとえば最近モロッコがNSNを採用した。モロッコの場合最大の理由は自国で流通している装備品の71%がすでにNSN採用品であることに関係しているからである。というのは元来モロッコは国産品NSNはない。


従って航空機や艦船などエンドアイテムを導入するたびにその装備品はすべて諸外国のNSNが採用されまさに輸入装備品のオンパレードとなっている。NSN登録と国産装備品の使用が可能になることがモロッコにとって最大のメリットである。いや正確にはそうせざるを得なくなったのである。


ところで米国政府はF-35に搭載するすべての装備品でさえNSNを付与する計画である。そもそもFー35に搭載される装備品はすべてALGSの中のALISと呼ばれるFー35装備品情報システムで管理されすべてがメーカのパーツ番号で登録される。Fー35は知ってのとおりPBL契約として民間企業が全面的に請け負うものであり主要国である米国政府も装備品管理にはタッチしない。


しかしFー35はわが国を始めとする多くの国が導入を決めている軍用機である。軍用機は補給処など国や政府の施設を使い、また補給要員も官側で賄って維持管理する。


そこでFー35はPBL契約に基づきCLS(コントラクタ・ロジスティクス・サポート)と呼ばれすべて民間主導で賄われる。F-35装備品は民間がメーカ・パーツ番号で管理しNSN番号の付与は必要ないという立場をとっている。


ところが米国防総省によれば実はここに大きな問題がありNSNを付与、登録する必要があるいうことが表明された。それによればこのCLS体制の欠陥はいままでのPBL契約で指摘されてきたと言う。


なかでも最大の問題は装備システムの使用国や配備先が紛争国あるいはその関係国である場合、CLSは機能しないことが明らかにされた。民間製のロジスティクス・システムでは現地物流・配備・装備・整備に法的な問題が浮上したのである。

米国議会は紛争当事国に駐在するあらゆる米国民間人や企業の帰国を命じる権限を有しており、いざとなれば強制的に撤退させる。米国民間企業との取引には必ず不可抗力条項というものが存在し紛争による免責条項が織り込まれている。


例えば現実問題としてイランやエジプトなどは紛争地域として法的に民間業者は立ち入りができない状況が表面化したとされている。


米国政府はこの様な事態を防ぐためにFー35の装備品には当初からNSNを保険として独自に付加することを決めたのである。NSNが付加されるということは即ち、国が物流・配備・装備・整備を可能とするいうことである。そしていざ有事というときは国が民間に変わり維持管理できるということである。NSNを付与するということはそういうことである。


これによりNSNを登録する各国の登録局(NCB)はF-35装備品のすべてにNSNを付与することでいかなる事態に対しても維持管理を可能とした。ただしFー35は今後の問題であり、あくまでもPBL契約により民間企業がCLSを運用しALGSやALISをもって装備品を管理することが基本であり、メーカ・パーツ番号による維持管理体系であるが、米国政府は将来の保険としてFー35装備品にNSNを付与、登録することにしたのである。


国家があらゆる防衛装備品をNSN体系に移行するということは同盟諸国との共通性を高め、共同管理の一元化を推進し相互運用性を高めるという後方支援体制の強化に他ならない。NATO諸国ではその効果はいざ有事という時に効力を発揮するものとして深く捉えられているのである。 


【お願い】本誌の性質上、出来る限り日本語にしてお伝えしているが、適訳であるとは限らない。また、紙面の都合上全ての原文を引用できない場合がある。なお、本誌は参照情報源としてだけ使用されるものであり、完全性や正確さを保証したり主張したりするものではない。また本誌に記載された内容を無断で引用または転載することは禁じられている。