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2015年01月01日

【F-35とNATO装備品識別】

-グローバル・ロジスティクスへの道-

読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。

昨年わが国安倍政権が集団的自衛権の限定的な行使を容認したことで日米同盟がより一層強固になり装備・技術協力においても強化することで一致しました。また昨年末には米国政府がF-35のアジア地区整備処点を日豪に決定するなど一段とわが国のロジスティクス環境を向上させる機運が高まっています。また米国政府によればこのF-35装備品についてはNATO装備品識別も用いられる計画もありいよいよわが国も世界の一員として世界標準の識別システムに加入することになりそうです。昨年わが国の民間人として初めてNATO装備品システムの研修を終えた筆者はこの機を逃すことなく米国や豪州、NATO諸国らと共通した装備品体系への参入・転換を果たしてもらいたいと願うばかりです。(DCメール 2015年1月1日 No.380)


■世界標準の装備品識別とは

米国が主導しNATO諸国が推進する世界の装備品番号体系では国別コ-ドを採用して各国の装備品を類別化しています。わが国の国別コ-ドは「-30」( ダッシュ30)と呼ばれています。しかし現在「-30」を付けた装備品は存在しません。それはいままでわが国が法的に装備品輸出を制限してきたためにこの世界標準の装備品体系を対外的にははもちろん国内でも採用しませんでした。しかし新たな防衛装備移転3原則への転換により装備品共通化の道が開けたのです。国別コードを付けた装備品は一目でどの国で「登録」されたかが分かる仕組みとなっています。

同盟国である米国やNATO諸国および準同盟国となる豪州などのNATO援助国では他国からの装備品をNATO登録品でない限り採用しません。正確に言えば採用できないのです。その理由はこれら諸国間では共通化された装備品体系を採用することが義務付けされておりそれにより例えば国連での平和維持軍のように各国の軍隊が共同して任務に当たる時でさえその即応性、効果的運用性、コストダウンなどが図られているからです。

このシステムはNATO装備品システム( NCS)と呼ばれもともと米国が採用していたFLISをNATO諸国を中心に現在まで38か国に拡張させたもので1700万を超える膨大な装備品デ-タベ-スとなっています。そこでこれらの国々ではNSN登録されていない装備品を必要とする場合は使用する国が自ら自国品として登録する策を用いなければなりません。実はNCSには約8万2千件ものわが国の装備品が含まれているのですがこれらを登録した国は30カ国余りに上ることが分かっています。理由は上記の通りわが国ではこの登録システムが未採用であったためです。今後同システムを採用することでわが国の高信頼性装備品の登録が速やかに行われることを期待するところです。

ところでNCSとは何でしょうか。NATOとの協力関係は第1次安倍内閣の2007年にわが国の首相としてはじめて表明して以来のことで、さらに昨年に入って2度目の訪問で更なる協力体制が強化されました。ロジスティクスの観点からいえばわが国は米国だけとの関係を強化するのではなく米国自らが推奨するNATOを通じて世界の国との協力関係を築いていくことが大変重要なのです。

 

そこでこの登録制度にわが国に導入するためにはNATOの承認を受け、その資格国(これをティアツ- 国という)にならなければなりません。世界各国との装備品体制の共通化が不可避であるという意識改革が何よりも必要なのです。そしてわが国の装備品輸出と同様に他国との相互運用性やコスト削減という重要課題に直面していることを強く認識しておく必要があるのです。

 

     
ところでこの装備品識別とF-35との間には非常に興味ある話があります。一昨年の11月初旬、NATOコディフィケーション・フォーラムがデンマークのコペンハーゲンで開催されました。NATOコディフィケーション・フォーラムとはNATO諸国を中心に世界の66カ国が一堂に会して各国の防衛装備品の共通化を図り、またNATO装備品管理システムであるNCSの問題点や各国の登録機関(NCB)からの報告の場になっている言わば年次総会です。
 


このフォーラムの報告のひとつに米国政府からF-35装備品のすべてにこの装備品識別を付与、登録するとの表明がなされたのです。そこでこのことがどういうことかまたこのことがわが国にどのように関わるのかを説明しましょう。

 

そもそもF-35に搭載される装備品はすべてALGSの中のALISと呼ばれる民間企業のLM社等によるF-35装備品情報システムで管理されすべてがメーカのパーツ番号で登録されます。F-35は知ってのとおりPBL契約としてLM社等の民間企業が全面的に請け負うものであり主要国である米国政府も装備品管理にはタッチしません。

 

しかしF-35はわが国を始めとする多くの国が導入を決めている軍用機です。軍用機は通常わが国自衛隊のように軍の補給処など国の施設を使いまた要員も官側で賄って維持管理します。しかしF-35はPBL契約に基づきCLS( コントラクタ・ロジスティクス・サポート )と呼ばれすべて民間主導で賄われるのです。そこでF-35装備品は民間がメーカ・パーツ番号で管理するという立場をとってきました。

 

ところがこの総会で米国はここに大きな問題があり各国が関与する共通装備品番号も付与、登録する必要があるということを表明したのです。米国によればこのCLS体制の欠陥はいままでのPBL契約でかなり指摘されてきたと言いいます。なかでも最大の問題は装備システムの運用先や配備先が紛争国あるいはその関係国の場合CLSは機能しないことが明らかにされています。法的に見て民間製のロジスティクス・システムだけでは現地の物流・配備・装備・整備が制約される問題が浮上したのです。

 

米議会は紛争当事国に駐在するあらゆる米国民間人や企業の帰国を命じる権限を有しており、いざとなれば強制的に撤退させることができます。米国企業との取引には必ず不可抗力条項というものが存在し紛争による免責条項が織り込まれることは知っての通りです。例えば現実問題としてイランやエジプトなどは紛争地域として法的に民間業者は立ち入りができない状況が表面化したとされているのです。

 

米国はこの様な事態を防ぐためにF-35の装備品には当初から各国政府が共通した装備品番号(これをNSNという)を保険として独自に付加することを決めたのです。NSNが付加されるということは即ち国家が物流・配備・装備・整備を可能とするということです。そしていざ有事というときは国が民間に変わり維持管理できるということです。NSNを付与するということはそういうことなのです。

 

NSNを登録する各国の登録機関(NCB)はF-35装備品のすべてにNSNも付与することでいかなる事態に対しても維持管理を可能とするとしました。

ただF-35問題はあくまでもPBL契約によりLM社等の民間企業がCLSを運用しALGSやALISをもって装備品を管理することを主とするメーカ・パーツ番号による維持管理体系ですが米政府は将来の保険として装備品にNSNを付与、登録するとしました。これらの問題についてはF-35のPBL契約の窓口であるJPOに対して代替装備品の不確実性を挙げ注意を喚起してきた結果、NSNの必要性が認められたものであるとして今後の具体的な計画が待たれるところです。

 
 

そもそも国家がその国のあらゆる装備品をNSN体系に移行するというのは同盟各国との共通性を高め共同管理の一元化を推進することです。そしてその効果はいざ有事という時に効力を発揮するものです。米国や豪州、NATO諸国はそのためにNSN管理体制を求め最近ではモロッコがアフリカ諸国で初めてのティアツー 国となりましたが、そこにはNSN装備品体制に移行することで同盟諸国とのシステムの共通化、装備品の共同運用を可能にし、いざというときにはNATOを含む加盟国と全域で装備品システムの補完ができるメリットを採択したものであると言えるのです。

 

 

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