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2014年01月16日

【デファクト標準としてのMILスペック】

ーわが国は米国による国際標準化構想に参加すべきであるー

わが国の防衛・航空宇宙分野における標準化活動はMILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるようにモニター態勢の整備を検討する必要がある。これはわが国公的機関による提言である。ここでいうデファクト標準とは事実上の標準を指している。そこで筆者は永年MILスペックのコンサルティング業務を行う立場からわが国がMILスペックをデファクト標準と考えるなら米国が求める国際標準化構想にも積極的に参加すべきであると提言したい。現在の態勢が続く限りわが国防衛標準化構想は遅々として進まず世界的な枠組みから孤立したままであることに危惧するからである。(DCメール 2014年1月15日 No.357)


■わが国は米国による国際標準化構想に参加すべきである


MILスペックはMilitary Specification といい、直訳すると米軍仕様書である。米国防総省( DOD )が米軍の装備品の開発や調達をするための要求を技術的に記載したもので、表記方法も定められていて表題、概要、適用文書、要求、検証などの項目が順番に表記されている。MILスペックは個別案件毎に適用されるのでその数は3万件にも昇り、現在では米軍だけでなくNATO諸国を中心として世界中の国々で用いられ日本でも数多くの 防衛装備品や航空宇宙機器あるいはそれらの役務( サービス )に賄われている。


MILスペックは宇宙や空間、深海、熱い砂漠地帯や熱帯雨林、北極や南極のような極寒地でもその性能を100%発揮するように材料、試験方法やその 運用基準が定められている。そしてこのMILスペックには 多種多様な文書形式(Military Specification や Military Standard、Drawing, やHandbookなど)があり、数の上で Military Specification が圧倒的に多いためこの標準化文書全体のことを総称してMILスペックと呼んでいる。


MILスペックは航空機や電子通信システムなどの部品や材料のみならず、靴や帽子、缶詰や鉛筆削りといった特殊な生活用品や事務用品に至るまで何でもある。そこで例えばユーザはMILスペックが改訂されるたびに内容を精査し部品や材料を決定するが、受入検査時に多くの問題が生じていることも事実である。


DODによれば本日現在MILスペックの総数は29,232件にのぼる。この数はここ数年大きな変動は無い。一時はMILスペックが無くなるのではないかという噂が立ったがそれも間違いである。2005年のDODによるMILスペックの再活性化宣言によってむしろ増加傾向にあるといえよう。


さて世界の技術標準の分野においてこれほど膨大でかつ厳格な標準化文書は類例が無い。また頻繁に改訂や修正あるいは移転が繰り返され、ツリー構造をした参照文書方式であることも大変ユニークである。こういったことがスペックの利用者や管理者にとっても大変わかりにくく、ゆえに誤解されている部分が多いのである。


近年米国は自国だけではなく多数の同盟諸国との間で国際標準化推進活動を強化してきており、NATO諸国やカナダ、オーストラリアといった文化的にも米国に近い同盟諸国は米国主導による新しい標準化活動や取得改革を通じて相互運用性を高めており、着実に防衛標準化体制の強化を図っている。


このような流れは今後益々国際化し文化的にも異なるアジア・アフリカ諸国を幅広く覆うものと考えられる。事実、韓国やシンガポール、フィリピン、マレーシアなどでは米国からの後方支援情報の恩恵を受けているが、標準化政策においても同様な環境下に置かれつつある。


わが国は現在米国と同盟国でありながら、わが国独特の風土によりこのような枠組みには参加せず、したがってわが国の防衛標準化政策にとって必要不可欠な米国とのシームレスな標準化構想やSTANAGなどの国際標準化情報の供与に対しての恩恵を受けるためにも米国の進める標準化構想に進んで参加していくことが重要である。


ところでわが国の公的機関ではMILスペックを事実上の標準であるデファクト標準として次のように認めてきた。


「わが国の防衛・航空宇宙分野における標準化活動はMILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるようにモニター態勢の整備を検討する必要があるとされてきた。」


しかし現実問題としてこういった米国主導の標準化体制には追随しておらず個別のMILスペックの改廃を追うしかないという感が強い。


なかでも近年のDOD標準化情報の開示能力が格段に上がったにも拘らず民間企業はともかく監督官庁もその情報活用がままならず、折角の恩恵を受けられないことは誠に残念でならない。国防あるいは防衛という観点においての技術標準化政策は地味でありながら取得や調達を支える重要政策である。日米同盟というからにはこういった分野が共有化されることによって初めて機能するものである。このような指摘が10年以上も前にされておりながら、一向に改善されていないのは相変わらず米国依存体質からの脱却がなされていないと言われてもしかたがない。


ここで言う米国が目指す国際標準化協定(ISA)とは米国主導による同盟諸国との相互運用性の構築による広域且つシームレスなロジスティックス体制の確立にある。DODのISA推進計画によると米国はこれら国防標準化政策を広く同盟諸国へ推進することで相互運用性を高め一貫した同盟諸国間の国防取得計画の実現を可能にするとしている。同盟諸国の標準化とは装備品やその手続き、戦術および主義など多国籍軍がともに効果的に作動するために重要な成分の1つであり、実行可能な範囲は基本的な米国国防の基本方針となっている。相互運用可能なシステム、交換可能なシステムあるいは共通システム、 サブシステム、設備、ソフトウェア、コンポーネント、 部品、およびコンサルテーションを含む消耗材、 コマンド・コントロール(C3)、装備品、燃料、供給などいくつかのものあるいはすべてが同盟国の中で互換性をもつ運用構成となっている。 このISAは相互運用の保証としてまた同盟国との作戦即応性や協力にとって重要である。ISAは統合や連合作戦を増加させ情報技術を達成させロジスティクスを改善しそして技術的な洗練を増強させる。その運用上の要求を保証するために連合作戦は識別され文書化され利用可能で容易に作られることが重要となる。現在米国は多数の同盟国と標準化協定を結んでいるが主なものを次に示す。


■北大西洋条約機構(NATO)

NATOは 北アメリカとヨーロッパに在する諸国の平和のための協力協定国で構成された同盟である。NATOの基本的役割はその加盟国の自由および治安を政治的・軍事的手段によって保護することである。米国法(USCTitle10、セクション2457)では米軍が北大西洋条約の下のヨーロッパで使用されるために取得した標準化設備が他のNATO加盟国によって使用される設備と同様の目的のために相互運用に必要なレベルまたは程度とされることは米国の政策であるということである。NATO標準化機構では標準化を有効にする権限、要求、また従属する部隊を割り当てること、標準化に関連する活動に作用することなどが業務となっている。

■米英加豪陸軍連合(ABCA)

ABCA(AMERICAN、BRITISH、CANADIAN、 AUSTRALIAN軍)は相互 運用と標準化を促進する国際的なプログラムである。米軍および英国、カナダおよびオーストラリアの各軍はABCAにあるプログラムが相互運用上連合力の能力として定義され適切なパートナーとしてまた割り当てられた使命の実行ともに訓練される。

■航空宇宙空軍相互運用会議 (ASIC)

ASICは旧航空標準化として知られていたオーストラリア、ニュージーランド、カナダそしてアメリカが結合した調整委員会をASICとして位置づけ国際的な空軍組織を含む構成となっている。現在と将来の航空宇宙における増強やミサイル、戦争能力などを共同 連合した相互運用性を高めることがASICの使命である。また目的は標準化によって実現される。ASICの任務はワーキンググループおよびプロジェクト・グループ構造による遂行となっている。


■相互認定品運用制度(NQA)

米国と他のNATO諸国間では認定品の相互運用制度がSTANAG4093に よって決められている。米国では自国のQPLやQML製品のリストをNATO諸国の仕様書に運用できるようにしている。また同盟国からのQPLの受理や認定業務の受理もおこなっている。 DODが取得で使用する同盟諸国の認定品仕様書を受理する場合、国際協定によって準拠される場合以外は管轄する全米認定機関(NQA)が同盟諸国のQPLやQMLを決定している。また製品情報も同盟諸国の認定承認の根拠となるために試験データ等が必要とされることもある。


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