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2013年10月16日

【わが国に押し寄せるグローバル・ロジスティクスの波】

―Tier2各国の戦略とわが国の存亡―

皮肉にも長い間平和であったことがわが国のロジスティクスを根幹からなし崩している。さらにわが国にはロジスティクスを計量管理する風土はない。知っての通り現代のロジスティクスは装備システムの即応性を最適化するための計量化政策である。それにより装備システムの持続性が確保されるからである。そこでシステムはアリの這い出る隙間もないほど共通化され互いに補完されそして最適性が保証される。その意味において現代のロジスティクスは一国では成し遂げることができなくなった。米国が提唱し世界が実践するグローバル・ロジスティクス(GL))の理念はそこにあるのだが今のわが国は巻頭で述べたとおりである。そこでこの理念をもって押し寄せるTier2諸国の荒波にわが国の国益が侵されるまで待つか。ガラパゴスを堅持するのか。今回はGLを推進するTier2各国の戦略とわが国の存亡についてまとめた。


■わが国に押し寄せるグローバル・ロジスティクスの波

GLの事例を挙げよう。NCSと呼ばれるNATO共通装備品システムは13桁の物品番号(NSN)を付与しNATO諸国およびTier2各国(現在豪州や韓国、ロシアを含む9カ国)が登録を許されそして自国の装備品提供が可能となる。その最大の目的は即応性に基づく装備品の欠落時間を最大限に短縮することにある。


しかしながらわが国は未だに登録もせず従って自国の装備品提供もままならず、また世界各国とのシステム共有化も果たしていない。このことがわが国で話題にならないのは巻頭で述べたとおり今だにロジスティクスが醸成されていないからである。


F-35を始めとする米国の装備システムの運用・維持管理は統合持続性の名において世界規模で計画され最適な即応性を図る戦略が講じられていることは知ってのとおりである。当ブログでも紹介した韓国が在日米軍機の主たる整備事業を請け負った事例などはこの米国による統合持続政策の一例に過ぎない。

■韓国はすでにTier2国として10年以上も欧米諸国と駆け引きをしてわが国の制空権を脅かす在日米軍機の整備事業を執り行うことに成功した。しかしこの韓国による戦略の波紋は単にわが国防衛産業への影響のみならずわが国の国防に関わる大問題に発展する可能性があることを知らなければならない。そしてさらに重大なことはわが国中枢はこれらわが国の国防政策に直結した米軍機の整備事業を自らの手で執り行えないことさえ知らされていなかったのだ。

韓国がここまで急成長した裏には米国を中心としたNATOとの20年来の深い結びつきがある。韓国はわが国が装備品輸出に手をこまねいている間に規制改革や組織の再編そして新しい技術の導入と実践を次々と繰り返し総力をあげて世界の装備品輸出市場に躍り出る計画を成し遂げてきた。

そして韓国は既にNCSに加盟する15カ国との2国間協定を締結し、また近年の目覚ましい装備品輸出実績をもって着実にGLの世界ではアジアの盟主として自他ともに許す存在にのしあがったのである。GLの世界では韓国はもはやわが国が知る韓国とは一味違う。今や韓国は米国の指導で即応性を体現するPBL手法を身に付け着実にアジア地域におけるPBL型整備事業などのGLの普及に邁進しているのである。



■オーストラリアは昨年自国の防衛産業界を世界最大の軍用機メーカのひとつであるN・グラマン社のワールド・サプライ・チェーンに参入する枠組みを同社と協議し支援チームを立ち上げた。この支援チームは参入する自国の防衛装備品メーカを選別し認定する役割をもつものである。こういったオーストラリア政府の自国装備品産業界への手厚い支援策は今に始まったわけではない。自力だけでは防衛体制を強化することができないオーストラリアは自国を守るためにあらゆる手立てを講じて諸外国と組んで自らを強化する方法を古くからとってきたからである。

特にオーストラリアはロジスティクス分野では早くから欧米諸国と同盟や協力関係を築いてきており、その意味ではオーストラリアはアジア太平洋諸国のなかで最もロジスティクス概念が普及している国である。このNCSにおいても早くからTier2国としてアジア各国の模範となってきた。しかしこのたびのN・グラマンとの支援策は今ロジスティクスそのものが急速にグローバル化していることに危機感を募らせたためだ。

また昨年初のオーストラリア製F-35装備品がL・マーチン社に引き渡された。ロベット・テクノロジーズ社はオーストラリアの精密機械メーカでF-35機体のキール(竜骨)とロンジロン(縦構造)部分のアセンブリ部品を納入した。この式典に出席したオーストラリア国防相は自慢げにこれはオーストラリアにとって重要な日である。F-35については現在まで30社のオーストラリア企業が3億ドルを契約したが今後はライフサイクル・ベースで30億ドルを見込んでいると述べた。このビジネス・トークの裏側には同盟各国との装備品共通化が隠された命題であった。このオーストラリア政府がとった産業育成と国土強靭化の2枚看板こそが今やわが国も含めた世界各国が掲げる共通理念なのだ。

■ところで昨年Tier2に仲間入りしたロシアは APEC議長国として物品は低コストによる製造と消費者への物流チェーンに沿ったうえで信頼性を強化することが国際貿易の重要な要素であると述べた。これは経済的に実行可能で安全な物品のサプライチェーンを形成する物流機関の様々な種類を調整し最先端の情報技術や衛星ナビゲーションシステムと輸送のハブとコリドーを提供し輸送セキュリティ基準の調和が含まれている。

近代化に関する協力はすべてのAPECメンバーの利益になる。このために革新的な開発のための有利な制度的環境を形成する方法に高度なノウハウを融合し科学技術やイノベーションにおける地域協力のメカニズムを作成する必要があると述べたのである。

なかでもロシアはAPECメンバー間の協力の透明性を高めることの重要性を指摘し規制協力の行動計画を実装する必要性を強調した。ロシアは技術革新と関連する貿易の技術的障壁を削減するために情報交換の役割を強調し国際規格ISO 22745(eOTD)に基づいた多言語オープン辞書を編纂しXML形式でのAPECメンバーの技術規準や規格変換をするためのパイロット•プロジェクトを草案する必要があることを表明した。そして小委員会のすべてのメンバーがこの作業に積極的に参加することを認めた。ロシアは昨年NATOのTier2国として認証されNSCを通じて自国の防衛装備品を世界市場に送り出そうとしているのである。

■NCSの最大の目的は上記のように即応性に基づく装備品の欠落時間を最大限に短縮できることにあるが本当の価値とはNSNに取り込まれた各種要素データにより在庫の確認、保存期間の識別、交換・代用可能な供給物品の識別、利用可能な代用品の最大限使用、価格情報の提供により防衛予算の最適化、武器システムのライフ・サイクルを拡張し、設計、製造および修理プロセスのためのサイクル・タイムの改善、機密情報を保護し多数の調達業者の登録、重複物品の識別援助などが最適に行なえることにある。

ところで現在NCSは品目識別における装備品データを必要とする新たな国際規格の互換性に関する作業ーSSCプロジェクトのフェーズ4に入った。識別をサポートするソース・データの交換を自動化するISO 8000とISO 22745(eOTD)の採択によりデータ品質管理が大幅に改善されたからである。

例えば英国では実装試験においてテリヤ―型戦車のすべての装備品を完全に自動識別化することができ全体の72.5%の技術データの構築が高信頼性に基づき大幅な時間短縮によって達成された。これらの新しいIT技術はウェブ上でビジュアルな手がかりを用いて表すことができ、いくつかの成果指標は実戦レベルに達するとしている。このことにより今後各国のNCBでは類別や識別業務を大幅に短縮し改善することで装備品の欠落時間短縮に多いに寄与することになる。

■以上のようにNATOを旗頭に米国主導のGL戦略はわが国がTier1であろうと無かろうと当初の目論見どおり世界に侵食し続けている。目論見とはロシアの提案のように民間品をも取り込み13桁のNSNを世界共通の品目識別コードにすることに他ならない。産業力の弱いオーストラリアは政府主導で企業群を米国サプライチェーンに組み込ませ、輸出戦略にでた韓国は米国と組んでその輸出高を10倍に押し上げ停滞する欧州勢を尻目に3位を狙い、そしてロシアはいよいよもってAPEC電子商取引におけるNCSとの電子共通辞書採択を提唱した。

そこでまさにGLを標榜したF-35を採択したわが国にとってみれば今自らが積極的にTier2参加に向けて行動するチャンスであるが、もしこのままTier1に踏みとどまれば逆にこれら諸国によるGLの嵐の洗礼を受けることは想像に難くない。今わが国が積極的にグローバル・ロジスティクスに参加することは決して軽軽ではない。それはわが国政府が目指す産業育成と国土強靭化計画そのものなのであるから。

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