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2013年09月12日

【桜林美佐著】

ー武器輸出だけでは防衛産業は守れないー
もはやわが国の防衛と名のつく分野において防衛ジャーナリスト桜林美佐の名前を知らない人はいない。女史は日本各地の自衛隊や民間企業に足を運んでは国防の実態をつぶさに観察し警鐘を鳴らす大変チャーミングな女性である。また防衛省が主催する防衛生産・技術基盤研究会委員として忌憚なくモノ申す希有の存在でもある。このたび女史から新著「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)が発刊され弊社にも寄贈された。そこには弊社が標榜するグローバル・ジスティクスについてのページが割かれていた。そこでご本人の了解を得たうえでこの部分について紹介をしたい。(DCメール 2013年9月15日 No.349)


■武器輸出だけでは防衛産業は守れない

武器輸出は日本の有力な切り札。引き合いの多い技術を活かせば外交力にもなるだろう。だが、企業には踏み出せるだけの体力がなくなっている・・・。(中略)このままでは10年を経ずに日本の防衛力は取り返しのつかないほど弱体化するだろう。・・・・。

こう書き出した女史の新著「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」は現行の入札制度がいかに企業の体力を消耗させているかを大企業から町工場まで生産現場の声を聞きながら紹介している。また装備品を海外から調達する場合や国際共同開発・生産へ参加する際に物的基盤、すなわち防衛生産・技術基盤を国内に保持することにより適した装備品を調達・維持でき安全保障の主体性を確保しながら、抑止効果としての防衛力を有することができると提言している。これらは女史が防衛生産・技術基盤研究会の委員として直面する課題を自ら民間企業の立場からまた自衛隊の現場を歩きながら検証し報告したものである。

なかでも弊社が日頃から取り組むグローバル・ロジスティクスの分野に足を踏み入れ活字化したことは快挙である。グローバル・ロジスティクスは日本ではなじみが薄くまた地味で難解な分野だけにマスコミもなかなか記事にしにくいところがある。そこでここでは女史の新著「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」のなかからいくつかを紹介しよう。

「米国のグローバル・ロジスティクス戦略」と題した項目ではこのたび日本が導入決定したF-35のALGSについて紹介をしている。国内基盤維持の観点から日本の企業がどの程度参画できるのかアメリカのこの新しい考え方を知っておく必要があるとしている。またF-35が日本に導入されるということはここに書かれたアメリカの戦略の一翼を担う覚悟が必要ではないかとも進言している。

なかでもアメリカのグローバル戦略はNATOに参加する世界の60カ国(注)に浸透しており共通した13桁の装備品番号体系を維持することでお互いに装備品登録がされ、取引されている実態を紹介している。そしてそれが可能なのはティア2と呼ばれる一部の国であり、日本はまだそれができないティア1国であること、そのうえそうした環境のなかで隣国でありまたティア2国である韓国が将来日本の安全保障にとって大きな存在となることを予言しまた警鐘を鳴らしている。(注:現在では66カ国に増えている)

事実「韓国の台頭」の項目では昨年大韓航空(KAL)が沖縄の米軍基地に所属するF-15の整備事業を全面的に請け負うことになったことは韓国と米国の関係が強化され日本にも影響が出てくることが予想され聞き流すわけにはいかない。それも韓国政府が助成しているということになると日本においても呑気に構えているわけにはいかないのだ。そこで女史は日本は独立性を堅持するのか特定分野だけでも米国のロジスティクス戦略に乗るのかを決断する必要が迫られていると提言する。お母さんが韓流ドラマにはまって米軍までもが韓国なのかと訝しがり真剣に考えなくてはならない、またこのように日本は米国との視点の違いをわかってほしいと訴えているのである。

「日本版PBLは成功するか?」の項目ではこうした米国主導の世界の枠組みに参入するなら新しい契約の概念を取り入れる必要があることを示唆してそのひとつにこのPBLがあることを紹介している。PBLは現在防衛省でも導入しようとしている仕組みで、企業との契約形態を作業量ではなく可動性とか安全性といった成果の達成に対して対価を支払うという考え方にたつ概念である。しかしパフォーマンスの達成とは何かというしっかりした意思の疎通が不可欠であり下手をすると一方的な制度になりかねない。企業も部品を抱えるリスクだけを背負うことになりかねないだけにもう少し煮詰めなければならないのではないか。しかしすでに世界の潮流は部品登録、PBL契約が潮流である。F-35を選定したからには、日本もこうした流れに乗ることの意思表示をしただけに、今となってはFX選定の重大なポイントであることを知らなければならないとして忠告している。


■後記


桜林女史とはたまたま共通の友人と共に弊社の事務所を訪れたときからお付き合いをさせていただいている。そのとき事務所の壁にかかったわが祖父の写真を見て背筋がピンと伸びる思いがしたといわれたことが誠に印象的であった。実は祖父は戦前の陸軍中将として輜重兵監を務めていた。また女史の尊祖父も先の戦争のさなか外地で命を落とされたとかで、そのことが現在の防衛ジャーナリストという道に繋がっているとお聞きしたことがある。


新著「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」は女史の培った防衛生産・技術基盤の立場から日本の防衛というものを見つめなおし武器輸出だけでは防衛産業は守れないことを直言したものである。女史のように中央政府の提言と地方の現場の間に乖離がないように自らの足で検証するジャーナリストを知らない。ここにある女史のかずかずの提言が広く関係者に理解され日本の防衛力維持のために役立つことを期待してやまない。是非ご一読をお勧めしたい。


グローバル・ロジスティクスとは弊社が永年の歳月を費やして研究する米国を発祥とする後方支援の概念である。同盟諸国が共通した装備品システムを運用するという考え方は装備品システムの即応性維持のために可能な限りリアルタイムで共有した装備品情報の運用が求められるというものである。そして今やグローバル・ロジスティクスはNATOを中心として欧米はもちろんアジアやアフリカ諸国をも巻き込んで66カ国にも膨れ上がった参加各国は共通した支援体制の下、すべての装備品の運用管理は国際間の電子商取引を組み込んだグローバル・サプライ・チェーンへと拡大しているのである。

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