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2013年04月30日

【新・MILスペックの常識】

-米国防総省(DOD)との対話-

MILスペックユーザはスペックに記載された言葉のひとつひとつを理解し過剰なくらいに正確に把握することが求められている。MILスペックは米国防総省(DOD)の専門部局が発行し世界中の防衛や航空宇宙など精度と信頼性を要求される材料や製品に適用されている。そこでこのMILスペックを正確に把握し運用するためにDODとの対話をいくつか紹介する。弊社はMILスペック・コンサルティングとして永年DODとの対話を積み重ねてきておりその数は500以上に上る。今後わが国が装備品輸出などグローバリぜーションを標榜するためには是非とも知っておくべきMILスペックの常識である。(DCメール 2013年5月1日 No.340)


■事例ー認定品の赤信号問題

取得した製品が認定品であるかどうかは大きく取引に影響する。たとえば注文時に認定品データセット(QPD)が青信号であっても納品時に赤信号の認定品の場合はどう対処しているか。一般にMIL認定品の有効期間は2年間であることを知っておく必要がある。特例として潤滑材のように5年の有効期間の製品分野もある。そこで有効期間が切れる前に認定品メーカは継続の再認証手続きをしておかなければならない。一般にQPDの赤信号のケースは有効期限切れによるものが多い。ちなみに赤信号になった認定品は認証切れ(overdue)として「認定品ではない」のでユーザの納品検査で合格とはならず保留扱いとなることに注意しなければならない。

注)認定品データセット(QPD)とはーDODは2006年からQPDと称し、従来からのQPLやQMLをやめて新しく認定データセットと呼ばれるデジタル・データに変換してリアルタイムに認定情報の提供ができるようにした。このQPDがQPLやQMLと違う点のひとつに認定メーカ情報として赤、黄、青の信号機( Signal )をイラスト付きで紹介している。

ユーザはこれらの信号機を見て「現在ソースが有効である」か「期限切れであるかを判断する。このことは認定メーカとして登録されていても保証期限が切れていれば認定品として認められないばかりか納品されても認定品扱いがされない。だから資材部ユーザは発注前にしっかりとこの点を見極めなければならない。当然ながら納品時に赤信号で検査保留となった場合などはDODや供給したメーカと対話することが求められる。認定品の情報確認を怠り問題解決を図らなければ検査保留としてラインがストップするなど取引先との契約に重大な瑕疵をもたらすことがあるので注意が必要である。

■事例ースペックの誤記問題

MILスペック品の契約スペックに間違いが発見された場合、契約当事者は取引先と直ちに協議をしてその処置を決めなければならない。MILスペックの誤りだからと後から責任をMILスペックに転嫁することはできない。またDODでは通常MILスペックを廃止するとスペックを維持管理するチームも解散する。ひとつのスペックを管理、更新、維持することは多くの労苦とコストを伴うわけでエンジニアを含めた専門家チームが支援をしているが一旦廃止されるとチームは解散され新しく誕生するスペックに移動するのが常である。

例えばAN919に大量の誤記が発見された。AN919 NOT2においてAN919は廃止されSAE-AS5174に代替されたが多くのANーPIN番号が間違ったままSAEのASーPIN番号に置き換えられたことがわかった。そこでDODのAN919チームと対話した結果新しくNOT3を出すためのドラフト作成を申し出てきた。

通常DODはこのような訂正については受理するものの、即時改訂をおこなうというのはまれであり次回の定時改訂の際に修正あるいは変更するというものであるがこの場合は即時性の必然があったわけで即時NOT3の発行となった。

 
■事例ースペックの修正動議

溶接設定値の認定が重要なクラスAに要求されていないのはなぜか。MIL-STD-2219Aは航空宇宙機器材の溶接に関する基本規格のひとつである。その5.3.2項には以下の条文が書かれている。

Qualified weld settings are required for manual welding of Class B welds.

そこでこの溶接設定値の認定がより重要なクラスAに要求されていなくクラスBにだけ要求されているという問題が起きた。DOD当該規格部門に連絡を取り事案調査を依頼した。その結果クラスA、Bに関する問題提起については同意するところであり早速同規格の修正作業をおこない各部門にてチェックされたのちコメントとともに当該規格の作成部門に渡ることとなった。

MILスペックはWEBサイト等から正式に入手できるようになるまでには多くの段階と時間を費やさなければならない。その理由はMILスペックはあくまで公文書であり公文書の更新、改版、その他手続きには多くの取り決めが米国取得規則(FAR)等で定められているからだ。取引先との契約は重要であり問題を先送りにはできない。だからMILスペックに問題が起きた場合はできるだけ早期にDODと対話をすることで解決しておく必要がある。

 
■事例ースペックの移行問題

数年前DODは航空機の機体に取り付けるクランプ( 留め金 )のスペックMIL-DTL-85052をキャンセルしSAE-AS85052に代替することを回答してきたが結局現在ではそのまま有効(Validation)でQPDも認定品が収録されている。

この問題は2009年に弊社調査によりDODとSAEから入手した情報により新たにPRI-QPL-AS85052を策定する計画であった。当時SAEの説明によると航空機の機体に取り付けるループ型クランプM85052/1はオゾンや紫外線により使用されている緩衝材に欠陥( 亀裂などがはいること )があることからかねてより機体メーカが推奨する性能の高いフルオロ・シリコン緩衝材( Fuluoro-Silicon Cushion Material )を使用したクランプをAS5874として運用してきた経緯がある。

AS85052がMIL-C-85052と同一番号で民間規格として登場したのは2001年の3月であった。そこには全ての内容はMIL-C-85052と同じであることが詠われていた。このような移行計画はMILスペック改革と称されて当時大流行したものでこの事案も民間に預けて時期がきたら代替させる予定であったという。

ところが2005年3月になりDODはMIL-DTL-85052BとしてDTL型のスペックに改版させた。このDTL型のスペックはPRF型と違って製造方法論にまで言及するするものである。MILスペックの整理統合を図るDODは結局従来からのMILスペック色を残した仕様にすることでこのクランプを重要視たものであった。

一方SAEでは2008年2月に独自にクランプ規格を制定しAS5874とした。その記述には従来からのM85052/1クランプに重大な欠陥がありそれに代替するものとして急遽採用することを述べてきた。この変更提案は某航空機メーカによるものとされておりSAEは急遽そのメーカ規格を採用したと述べている。この問題は飛行中におけるオゾンや紫外線などによりクランプの緩衝剤部分に亀裂が生じたことが指摘されていた。

しかしながらSAEはその5ヵ月後の2008年7月に今度はAS85052を改版してこの新しいクランプ規格はSAEの最新材料スペックや規格を統合し改版したものであると述べてきた。当時PRIはDODとSAEの協力のもとで初めて民間によるクランプ認定品目表PRI-QPL-AS85052の完了を目指しておりMIL-DTL-85052とQPL-85052をいずれキャンセルしてその代わりにAS85052AとPRI-QPL-AS85052を採用する計画でいた。しかし冒頭でも述べたように現在当該MILスペックとQPL-85052は共に生きておりその配下に数々の認定品を有している。

また現在PRI-QPL-AS85052は存在しない。このようにDODとSAEは10年以上もの間に遅々として進まぬ代替品や代替規格のありかたまたその間における紆余曲折などにより10年来の確執も存在したかのごとく写る。このわずか数インチの小さな留め金具に10年の思いをかけていることに今更ながら航空機の安全性や信頼性にかける強い想いとして受け止めたい。MILスペックが改廃され移行される裏には数々のストーリがありこういったことを踏まえておくためにはスペックだけでは読みとることはできない。


■弊社におけるDODとの対話ー

わが国のMILスペックユーザはスペックが改訂されるたびに内容を精査し部品や材料を決定するが現実問題としてあらゆるプロセスにおいて多くの障害がが生じている。ユーザがこれらの問題を解消するためにはユーザの環境を整備してスペックに関する情報収集能力や理解力、問題解決能力を高めることはもちろん、関連部門や取引先に対しても知識レベルの向上、問題解決能力のスキル・アップなど、横断的な意識改革を徹底する必要がある。そして何より大切なことは発行元であるDOD各部局とのコミュニケーションを図ることが何より大事であることは多くの事例が証明するところである。

弊社ではMILスペック・コンサルティングとして調査依頼を受け付けている。DODやSAE、ASTMなどのスペックや規格などの調査依頼数は500件を越えており中には技術的な質問点や不明点あるいは認定品や枯渇した装備品の調査なども含まれる。なお弊社ではユーザの了解の元一般に周知すべき調査内容については率先して公開している。


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