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2013年01月26日

【豪、F-35装備品受注で30億ドルを見込む】

-同盟各国との装備品共通化が狙いー

昨年の8月24日に初のオーストラリア製F-35装備品がLM(ロッキードマーチン)社に引き渡された。ロベット・テクノロジーズ社はオーストラリアの精密機械メーカでF-35機体のキール(竜骨)とロンジロン(縦構造)部分のアセンブリ部品を納入した。この式典に出席したオーストラリアの国防相は自慢げにこれはオーストラリアにとって重要な日である。F-35については現在まで30社のオーストラリア企業が3億ドルを契約したが今後はライフサイクル・ベースで30億ドルを見込んでいると述べた。このビジネス・トークの裏側には同盟各国との装備品共通化が隠された命題である。産業育成と国土強靭化の2枚看板こそが今や世界各国が掲げる共通理念なのだから。 (DCメール 2013年2月1日 No.334)



■オーストラリアとF-35

2002年、オーストラリア政府はF-35の共同開発に名乗りを挙げた。当時の政府は「これは未来に対する投資である。わが国がF-35導入をするかしないかの問題とは別にF-35の開発に参加することは将来のオーストラリア産業界にとってこの上ない利益となるからである。これによりオーストラリアの防衛航空産業界は計り知れない技術力と経験を習得することになるからである」と発表した。


オーストラリア政府は2年前にも自国の防衛産業界をノースロップ・グラマン(NG)社のグローバル・サプライ・チェーン(GSC)に参入させることに成功した。同政府はオーストラリアの防衛産業界により多くのビジネス・チャンスを与えたのだ。


このようなオーストラリア政府の自国産業界への手厚い支援策は今に始まったわけではない。オーストラリアは自力では防衛体制を強化することができないために、自国を守るためにはあらゆる手立てを講じて諸外国と手を組んで自らを強化する方法を古くからとってきた。


特にロジスティクス分野では早くから欧米諸国と同盟や協力関係を築いてきており、その意味ではオーストラリアはアジア太平洋諸国のなかで最もロジスティクス概念が浸透している国である。NCS(NATO装備品システム)においても早くからT2(ティアツー)国としてアジア各国の模範となってきた。


一方国情の違いとはいえ、わが国はオーストリアとは大きく異なる。わが国には自国を守るだけの豊富な航空機産業資源がある。しかしそれゆえに残念なことだがわが国はこれら民間産業界への手厚い支援を二の次にしてきたと言わざるを得ない。特に防衛産業界にとっては数々の制約のために多くのメーカが自力で海外市場に乗り出さざるを得なかった。しかし民間企業のなせる業には限度があることは他国の事例を見るまでも無く明らかである。


実はNATOによればわが国メーカの装備品が世界の27カ国のNCB( NSN登録機関 )で約8万2千件も登録されていた。自らが登録機関をもたない国でこれほど多くの他国での登録を持つ国はわが国をおいて他にはない。日本企業は自力で他国のNCB( 登録機関 )を利用して登録しているのだ。これをわが国はどのように理解すればよいのだろうか。


わが国メーカはそこまでして他国のNCBを利用するのかという疑問が沸き起こる。理由はその国のNCBに登録することで同社の新製品にNSNを付与することができるからである。あるいは既存のNSNに代替品として登録することができるからである。


この登録によりその国の政府機関や地方公共団体などあらゆる政府や公共機関市場への参入を可能にするばかりか、FLISやNCSを通じて世界各国の政府機関への参入を可能にするパスポートとなるからである。この製品は何も防衛装備品に限らず一般消費財や材料、役務などあらゆる分野の素材から完成品、役務に至るまでが適用されている。


わが国メーカは米国はもちろんフランスやドイツ、オーストラリアに在するNCB(登録機関)を通じて自らが製造あるいは販売する装備品を大量に登録しビジネス展開をしてきた。それにしてもこのようにわが国装備品メーカが他国で登録している現状はまさに流浪の民のごとしで早期にわが国政府が主導してNCBの活動を積極的に行う環境を整備する時期に入っている。


次の数値はNMCRL(NATO装備品データベース)によるわが国装備品の海外NCB登録件数である。なお、このなかでオーストラリアにおける登録件数が最も多いのは上記のようにオーストラリア政府が登録に積極的な理由があるからなのかもしれない。(注)2009年NATO調べ。


オーストラリア   14091
米国        12230
フランス      9648
カナダ       8773
イギリス      6236
トルコ       4538
イタリー      4474
デンマーク     4295
ノルウェー     3884
ニュージーランド 3744
スペイン      3226
オランダ      1969
ベルギー      1462
ドイツ       1134
ポルトガル     786
ブラジル      559
韓国        378
チェコ       222
オーストリア    133
シンガポール   77
ハンガリー     72
ブルガリア     41
ギリシャ      27
エストニア     25
スロバキア    7
リトアニア     2
ポーランド     1


注:NMCRL記事については次のURLを参照ください。

http://www.datacraft-news.com/ontopics/287.html


■同盟各国との装備品共通化は避けては通れない

前述のオーストラリアは早くから欧米諸国と同盟や協力関係を築いてきた。NCSにおいても早くからT2(ティアツー)国としてアジア各国の模範となっている。その主たる理由は将に有事におけるリスク軽減に他ならない。自国の産業を育成しながら同盟各国との装備品共通化を図るという現在加盟する全ての国は同じ理念を掲げているのである。


一昨年わが国はようやく欧州装備品の類別業務を効率化するためにNCSに加盟した。NATO装備品DBの使用が可能なT1(ティアワン)加盟を果たしたのである。しかしオーストラリアのように自国の産業界を育成し同盟各国との装備品の共通化を推進するまでには至っていない。


わが国自衛隊が保有する170万品目ともいわれる国産装備品をNCSを通じて世界各国に送り出すことは現状ではできないのである。登録するためにはNSNという世界共通の識別システムの導入を行うことが義務付けされておりそのためには更にT2( ティアツー )という厳密に選定された国レベルでの加盟が必須となるからである。


第二次世界大戦で各国は個々の機関によって使用された同一物品に異なる名称を付けていた。当時これらの機関では同一物品を見極めることは難しく同一名称による物品を共有することはほとんどの場合不可能であった。また命名が異なるために同一物品の役割が少なくなり、逆に重複する状況を生む結果となりムダが生じ、戦費も益々増加した。 このように各国が異なる名称で装備品を呼んでいたら同じ物品を識別して移動させることは不可能である。そこで米国が先頭に立って類似在庫品の増加を抑制するためには、装備品特性を共通化することが不可欠であることがわかった。 これがNSN概念の始まりである。


またNSN最大の目的は調達が迅速に行なわれることで装備品の欠落時間を短縮することにあるが本当の価値とはNSNに取り込まれた各種データにより在庫の確認、保存期間の識別、交換・代用可能な供給物品の識別、利用可能な代用品の最大限使用、参考価格情報の提供により今で言う取得改革、防衛予算の最適化、武器システムのライフ・サイクルを拡張し設計、製造および修理プロセスのためのサイクル・タイムの改善、 機密情報を保護し、多数の調達業者の登録、重複物品の識別援助などが最適に行なえる、まさにPBLにとって最適な装備品システムの構築が可能となるのである。

 
同盟国との間で装備品の共有化ができないということはロジスティクスの観点からいえば共同運用、共同任務の遂行に支障をきたすことになる。またこれでは満足な取得や調達も行なえず、しいては装備品の欠落時間が長期化し有事の際の対応にも事欠く事態が想定されよう。1980年代の湾岸戦争に懲りた米国がNATOを強く指導しまたNATOが2000年代に入って韓国やオーストラリア、シンガポールなどのアジア諸国に強く働きかけをして装備品の共有化を図った裏にはロジスティクスのグローバルリズムとそれをテコにした各国の産業政策や防衛戦略が相まった結果である。


韓国がすでに米国をはじめとするNATO諸国と帯同して装備品の共通化を果たしており大きな成果を挙げている。また欧米戦略とは一線を画すあの中国でさえも海洋ロジスティクスにおいて米国政府と協議を重ねまたNCSの導入を検討している。わが国が同盟各国との装備品共通化を図ることはわが国が抱える産業政策はもちろん各国との相互運用性を高める方策として待ったなしの状態である。

 

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