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2012年08月31日

【世界を席巻するNATOロジスティクス戦略】

社)日本航空宇宙工業会における講演会
8月29日標記の講演を副題として今、求められるTier2(ティア・ツー)への道と題して行なった。また講演のあと出席者との意見交換を行なった。講演内容はいままで当ブログで述べてきたNATOを中心として米国をはじめ多くの海外諸国のPBLやSCMまたNCSとのつながりについてまとめたものであるが、ここでは講演資料を概略する。なお従事者向けのため専門用語や略語が多くわかりにくいことはあらかじめお詫びする(DCメール 2012年9月1日号 N0.324)


まえがき
昨年嘉手納米空軍基地のF-15すべてを今後5年間韓国の大韓航空が整備することに決まった話はわが国の現状を如実に表した事例として変革が急務であることを物語っている。放置することは近い将来に必ず起こる不測の事態を招く要因となることは火を見るより明らかである。


データクラフトの紹介
1984年に設立された弊社は米国防総省(DOD)のMILスペック改革により誕生したASSIST運用を初めてわが国に持ち込みMILスペックの無料化とともにわが国ユーザ向けのスペック調査ではDOD傘下のDLAと渡り合い弊社ユーザはもとよりDLAからも多大な評価を得ている。

近年DLA傘下のDLISの承認を得て米国政府装備品データベースFLISのわが国運用を推進しその核となるNSNを積極的に紹介してきた。なかでも昨年ようやく果たしたNATOTier1(T1)加盟については永年にわたり推進活動を続けてきたが現在はTier2(T2)加盟に精力的に活動している。


PACSの役割と成果
米国主導のロジスティクス・アジア戦略であるPASOLSの分科会的な役割としてPACSの持つ意味は大きかった。PACSは当初DLISが主宰したが近年はNATO AC/135およびNAMSAが冠を引き継ぎ、予想以上にアジア諸国をFCS/NCSに引き込むことで強固なコアリション体制を築いたが、わが国は法規制もあり昨年Tier1加盟を果たすまではオブザーブ(傍聴)してきた。


NATO戦略の拡大。
わが国のオブザベーションを尻目に米国が主導するNATOロジスティクス戦略はアジアの近隣諸国を巻き込み、なかでも韓国の台頭は目を見張るものがあった。また近年はシステムの次世代化(NCS実装実験)とオープン化(APECとの電子商取引)が急速に拡がりつつある。やがてこれらはわが国の安全保障上のみならず通商貿易上および国際標準化戦略上の脅威となることを念頭におかなければならない


Tier2への道。
昨年Tier1(T1)加盟後に設置されたわが国NBCの存在は今後世界のロジスティクス先進国と肩を並べるTier2(T2)加盟にとっての踏み台となる。T2になると自国装備品のNSN登録ができ、JSFのALISなど今後PBLサプライチェーン(SC)を通じてわが国生産技術基盤維持上見逃すわけにはいかな事案となっている。


今なすべきこと。
わが国防衛産業の発展を考えると海外諸国のNCBを通じて細々と活路を見出す一部の国内装備品企業はともかく自社装備品のNSN登録がわが国でおこなえない現状は一刻も早く改善しなければならない。現在設置されたNCBの強化は武器三原則の見直し以前の問題であり韓国が7年かけたT2加盟を一刻も早めることが防衛産業基盤の維持と育成のスタートラインになるからである。


FCS・NCS
FCS(Federal Cataloging System)は米国政府による装備品便覧体系でFLIS(Federal Logistics Information Service)はその運用システムを指す。NCS(NATO Codification System)は米国のテ
コ入れによりFCSと共通化することで再生され現在はFLISデータの大半が含まれる。CatalogingとCodificationは同義語。


NATO加盟国とT1、T2援助国
現在NCSに加盟している国は64カ国、そのうちNATO諸国が28カ国、非NATO諸国が36カ国である。そのうちT2援助国は9カ国、T1援助国(Sponsor)は27カ国となっている(2011.11)このSponsorshipとはNATO友好国としてNCS加盟を希望する非NATO諸国への枠組みで当初はT1そして希望により審査後T2となる。T1はNCS情報の取得、T2になると情報の提供と取得が可能となる。


DAPA
韓国の目覚ましい発展(図)はDAPAによるところが大きいDODはDAPAを指導し、DAPAは韓国防衛産業界と一体化して国内輸出振興策を強化した。韓国空軍のBoeingF-15のPBL契約はDAPAの成果である。現在韓国はF-35配備を検討しているが、JSF/PBLサプライチェーンではDAPAは当然わが国を視野に入れているものと思われる。


PBL・JSF・NCS
PBLのサプライチェーン(SC)は例えばJSFのALISに組み込まれた装備品情報やサプライヤ情報はNSNによるものとなる。JSFは開発当初からPBLプロジェクトを組んでおりJSF CatalogやDLA PBL SCMの思想が官民一体となって結集している。


まとめ
NATOを旗頭にした米国主導のロジスティクス戦略はわが国がT1であろうと無かろうと当初の目論見どおり世界に侵食し続けている。目論見とは民間品をも取り込み13桁のNSNを世界共通の品目識別コードにすることに他ならない。産業力の弱いオーストラリア(T2)は政府主導で企業群を米国Cに組み込ませ、輸出戦略にでた韓国(T2)は米国と組んで10倍に押し上げ停滞する欧州勢を尻目に3位を狙い、そしてロシア(T2)はいよいよもってAPEC電子商取引におけるNCSとの共通辞書採択を提唱した。JSFを採択したわが国(T1)は今、自らが積極的にT2奪取に向けて行動することで世界と伍していくことが可能であるがT1に踏みとどまる恐怖は一生自立(自給自足)が出来ないことを知るべきである。さもなければ中国のように枠組みから外れることしか道は残されていない。