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2012年04月01日

【米国のグローバル・ロジスティクス戦略】

ーアジア太平洋地域の育成と協力についてー
7年前に米国防総省標準化総会に出席した時のことである。当時米国はイラク戦争で共に戦ったNATO軍のロジスティクス能力の低さ、特に共通装備品の欠如が致命的であったと報告していた。以来米国はNATOに対して数々のロジスティクス強化策を図り、STANAGの整備などは今日の欧米装備品共通化の原点となっている。昨年11月に米国オバマ大統領がオーストラリア連邦議会での演説で、アジア太平洋を最優先する新外交・安保戦略を表明したが、最近の米国を軸としたオーストラリアや韓国におけるロジスティクス政策は、それを裏付けるかのような状況を呈している。米国は着々とアジア太平洋地域にロジスティクス戦略を吹き込みそして地域の育成と協力に余念がない。(DCメール 2012年4月1日 No.314)



■アジア太平洋における米国ロジスティクス戦略

米国オバマ大統領は昨年の11月にオーストラリア議会で演説し、今後アジア太平洋地域において存在感を提示し続けることは米国の最優先課題であると述べた。


オバマ大統領は米国は今まで以上に大きく、長期にわたる役割を果たしていくと述べ、更にアジア太平洋地域ではオーストラリアと同様、日本や韓国、タイ、フィリピンなどの同盟国への関与を続けていくと語っている。 この歴史的なオバマ大統領の演説は、軍事拡張や経済成長によりこの地域で影響力を増す中国を念頭に置いたものとされている。


ところでオーストラリア防衛装備相は昨年10月、自国の防衛産業界を世界最大の軍用機メーカのひとつであるノースロップ・グラマン社のワールド・サプライ・チェーンに参入させる枠組みを協議し、支援チームを立ち上げる予定であると表明した。この支援チームは参入するオーストラリアの装備品メーカを選別し、認定する役割をもつものとされている。


オーストラリアはロジスティクス分野では早くから欧米諸国と同盟や協力関係を築いてきており、その意味ではアジア太平洋諸国のなかで最もロジスティクス概念が浸透している国のひとつである。NCS(NATO装備品システム)においても早くからT2(ティアツー)国としてアジア各国の模範となってきた。しかしこのたびの米ノースロップ・グラマン社との自国産業支援策は米国によるロジスティクス政策そのものが急速にアジア太平洋地域に広まりつつあることを物語っている。


また昨年米国ペンタゴンは韓国に対してMR(マテリエル・レディネス)に関するプレゼンテーションを行った。MRはすべての装備システムの即応性(レディネス)を維持しておく米国のスローガンである。アジアン・ロジスティクスでは今最も米国に近いといわれる韓国が米国と即応性の実現に向けて動き出している。韓国はオーストラリアとともにアジア太平洋諸国のなかでT2( ティア・ツー )国としてNATOロジスティクスDBにも深く関与しており、韓国製のNSN装備品が世界市場で活躍していることは衆目の一致するところである。


韓国政府は今年2月に米国ボーイング社とのF-15K戦闘機の運用・維持のために3億ドルのPBL契約を締結した。またボーイング社は韓国産業界のパートナーである現代グロビス社が国内物流とサプライチェーンを担当することを発表した。この現代グロービス社は韓国最大の現代自動車グループ企業の一つで、陸海空輸送、物流コンサルティング、倉庫、包装サービスおよびサプライ•チェーン•マネジメントを専門としている。


そのうえ米国政府は、昨年日本の嘉手納米空軍基地に配備されているすべてのF-15戦闘機は今後5年間にわたり韓国の大韓航空が補給整備(デポ・メンテナンス)を執り行うことを発表した。この契約の特長は従来からの米空軍管理に基づく装備品契約から大韓航空が全面的に装備品管理を請負うパートナーシップ契約に変更された点にあるという。また米国政府によれば韓国企業が選定された理由として永年にわたるF-15整備を経験してきた実績が大きく評価された結果であり、全面的に民間業者の権利と責任が問われるいわばPBL(あるいはプロダクト・サポート)によるパートナーシップ契約と思われる。


■グローバル・ロジスティクスとはなにか。

そもそも米国が提唱するグローバル・ロジスティクスとはなにか。米国にはNSN(ナショナル・ストック・ナンバー)はロジスティクスの国際語であるという文言がある。NSNはロジスティクス情報の国際共通語として加盟国ではもちろん、米国政府調達(FMS)など輸入装備品に携わる関係者の間では知らない者はいない。このNSNは
米国などNATOを中心に現在では世界の55カ国で採用されている装備品識別の最小単位である。


このNSNの最大の特徴はなんと言ってもこれら加盟国のなかでもT2(ティアツー)諸国の装備品メーカにより生産される装備品、例えば航空機部品から生活必需品に至るまでの互換品や代替品情報が満載されていることにある。 


わが国でも利用する米国装備品DB(FLIS)では米国製車両用ガスケットの代替品にドイツのダイムラー社製や英国のBAE社製が登録されている。これらの材質や形状、寸法や価格はすべて統一されており、例えば欧州地域における米軍活動において米国製のガスケットが枯渇したり納期に間に合わない場合、ドイツやイギリス製品取得するようにできているのである。その意味で現在アジア太平洋地域では米国が韓国やオーストラリアの装備品の運用性を共通化し、MRの追求、即ち取得のスピード化や廉価性を追求することで米国のアジア太平洋地域でのロジスティクス・プレゼンスを強化している。


ところでインターネットにより電子商取引が拡大され、電子データ化が推進されてきたが、米国は古くからこの問題をロジスティクス戦略として研究を重ねてきた。そしてECCMA(米国電子商取引コード管理団体)との協力により装備品データの識別・類別作業における共通技術辞書であるeOTDの開発に成功したのである。このeOTDは異なった工業技術データ・フォーマット同士の交換や転換を可能にするアーキテクトをもち、膨大なFLISやNCSを維持管理するためのコストを大幅に削減するプロジェクトである。米国やNATOではeOTDの国際標準化を目論み推進することで、NSNを核とした世界の装備品DBの構築だけではなく、国際連合との協調による国連物資コードの取り込みをはじめあらゆる世界の商品、製品、装備品DBの構築を視野に入れたグローバル・ロジスティクス戦略構想が見え隠れするのである。


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