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2011年10月23日

【オーストラリア政府、自国防衛産業界を手厚く支援】

ー日本はNCS登録制度の構築が急務ー
オーストラリア防衛装備相はこの10月11日、自国の防衛産業界を世界最大の軍用機メーカのひとつであるノースロップ・グラマン社のワールド・サプライ・チェーンに参入させる枠組みを協議し、近く支援するチームを立ち上げる予定である。この支援チームは参入する防衛装備品メーカを選別し、認定する役割をもつものとされている。一方わが国はようやく武器輸出三原則の緩和に踏み切る構えを見せているが、何よりも先頃加盟したNCSへの自国装備品の登録制度構築を急がなければならない。


今回のオーストラリア政府の支援策は今年の6月にノースロップ・グラマン社との間で締結したグローバル・サプライチェーン契約にもとづくもので、同国の防衛産業界により多くのビジネス・チャンスを与えるためのものである。

こういったオーストラリア政府の自国産業界への手厚い支援策は今急に始まったわけではない。自力だけでは防衛体制を強化することができないために、自国を守るためにはあらゆる手立てを講じて諸外国と手を組んで自らを強化する方法を古くからとってきたからである。

特にロジスティクス分野では早くから欧米諸国と同盟や協力関係を築いてきており、その意味ではオーストラリアはアジア太平洋諸国のなかで最もロジスティクス概念が浸透している国である。NCS(NATO装備品システム)においても早くからT2(ティアツー)国としてアジア各国の模範となってきた。しかしこのたびの米ノースロップ・グラマン社との支援策は今ロジスティクスそのものが急速にグローバル化していることに起因している。

そもそもグローバル・ロジスティクスとはなにか。DOD(米国防総省)にはNSN(ナショナル・ストック・ナンバー)はロジスティクスの国際語である、という文言がある。NSNは ロジスティクス情報の国際共通語として加盟国はもちろん、わが国でさえもFMS(政府調達)など輸入装備品の世界では知らない者はいない。このNSNは米国などNATOを中心に現在では世界の55カ国で採用されている装備品識別の最小単位である。

NSNは装備品に付けられた13桁の番号で、物品名、識別データ、管理コード、参考価格、性能データなど多数の固有情報が組み込まれている。NSNの数は米国だけで700万件を越すと言われ、NATOやオーストラリアなどその他の関係国を含めると2000万件にも上る膨大な数である。このNSNの最大の特徴はなんと言ってもこれら加盟国のメーカにより生産される装備品、例えば航空機部品から生活必需品に至るまでの互換品や代替品情報が満載されていることにある。 

例えばFLIS(米国装備品DBでNCSと共有)では米国製の陸上車両用のガスケットの代用品としてドイツのダイムラー社製や英国のBAE社製が紹介されている。もちろん材質や形状、寸法や価格はすべて統一されている。これにより例えば米国製のガスケットが枯渇したり、納期に間に合わない場合、米国はドイツやイギリス製品を取得するようにできている。このように今ではNATOを中心とした欧米諸国間では装備品の運用性を共通化し、また取得のスピード化および廉価性を追求することで登録された共通装備品であれば国を厭(いと)わずである。ところでわが国装備品には未だにNSNが採用されていない。

漂流するわが国の装備品。
国情の違いとはいえ、わが国はオーストリアとは大きく異なる。NATOによれば実はわが国メーカの装備品が27カ国のNCB( 各国のNSN登録機関 )で約8万2千件登録(注)されているという。もっともこの数はNCSに登録された世界のNSN1600万件の0.5%でしかない。わが国にはNSNを基本としたNCS登録制度がないために日本企業は自力で他国のNBC( 登録機関 )を通じて登録しているのである。登録内容の詳細は下記の通りであるが、米国やフランス、あるいは韓国やオーストラリアに在するわが国装備品メーカが当該国のNCB(登録機関)を通じて自らが製造( あるいは販売 )する装備品を登録している。

この登録には事前に NCAGE(企業コード )の取得をしなければならないが輸出業務や海外進出をしている装備品メーカのほとんどは取得済みである。それにしてもこのようにわが国で登録できない装備品を他国で登録している現状はまさに「流浪の民のごとし」で、またわが国が多くのビジネス・チャンスを逃していることは誠に残念である。マスコミによれば現在の野田政権は武器輸出三原則の緩和を唱えているようであるが、まずはわが国で登録できる環境を整備・構築することが肝要である。また現在防衛省が維持している170万件もの装備品をNCSに登録することでわが国の装備品メーカは諸外国からの取得調達に応じるビジネス・チャンスを得ることが可能になることを銘記すべきである。

次の一覧表はNATOによるわが国装備品の登録件数である。なお、このなかでオーストラリアにおける登録件数が最も多いのは、上記のような理由があるからなのかもしれない。
(注)2009年NATO調べ。


オーストラリア   14091
米国        12230
フランス      9648
カナダ       8773
イギリス      6236
トルコ       4538
イタリー      4474
デンマーク     4295
ノルウェー     3884
ニュージーランド 3744
スペイン      3226
オランダ      1969
ベルギー      1462
ドイツ       1134
ポルトガル     786
ブラジル      559
韓国        378
チェコ       222
オーストリア    133
シンガポール   77
ハンガリー     72
ブルガリア     41
ギリシャ      27
エストニア     25
スロバキア    7
リトアニア     2
ポーランド     1

 
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