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2011年09月30日

【F-35とオートノミックス・ロジスティクス】

-ライフサイクル・エアシステムという概念ー
いよいよこの12月にわが国の次期主力戦闘機が決定する。なかでもF-35は開発当初から最大のPBLプロジェクトとしてオートノミック(自律)型ロジスティクス(AL)構想が織り込まれている。ステルス性や価格面ばかりが一人歩きしているF-35であるが、いまや装備品取得はライフサイクルベースで考えなければならない。そこでここでは他の候補機とは一線を画しているALについて紹介する。F-35は航空機の取得ではなく、エアシステムの取得であると言われる所以がそこにあるからである。(DCメール 2011年10月1日 No.302)


■自律型ロジスティクスの魅力
そもそもF-35の共同開発、共同運用を合意した主な国はいわゆるNATO主要国とそのTier2諸国で、F-35の初期構想はPBLなどの次世代型ロジスティクス政策を可能にするロジスティクス先進国による共同プロジェクトである。


そこで、PBL(パフォーマンス・ベースド・ロジスティクス)にせよ最近発表されたPSM(プロダクト・サポート・マネージャー)政策にせよ米国政府が構想する次世代型兵器システム(この場合はF-35)はLCC(ライフサイクルコスト)のうちO&S(運用維持)コストを大幅に低減させ、開発製造などの初期コストと同程度(1:1)にすることで産業界の協力と自主努力を要請するものがF-35の基本思想である。


これは他の候補機のように従来からのレガシー(遺産)システムを「近代化」させるような伝統的なアプローチと異なって、全体論的に兵器システムやアセンブリ、部品およびコンポーネントのサポートを管理し、即応性を達成するために必要なあらゆるコンポーネントをシステムに組み込ませた設計思想となっている。そしてその結果、契約企業(F-35の場合、LM(ロッキード・マーチン)をプライムとした企業連合)との長期契約を通して、いわゆる航空機を取得するのではなく、エア・システム(航空システム)を取得するという新しい概念に立っているのである。


F-35はシステムとしてのリスクを低下させるためにライフ・タイム調達や契約業者との長期契約などの努力が求められている。こう考えてくると従来システムとの違いは寿命が嵩むごとに増加する従来型のO&Sコストに比べ毎年一定のコストで管理するものという考えに立っている。またこれにより即応性の向上、システム負荷(フットプリント)の削減および応答時間のスピードアップなど従来の兵器システムとは違った概念をもつものとして次世代型ロジスティクス・エアシステムともいわれる。


特にオートノミック・ロジスティクス(AL)と呼ばれる自律型あるいは自動制御型といわれるロジスティクス思想を開発当初から織り込んでいる。このオートノミクスとは人間で言えば暑ければ汗を流し、寒ければ筋肉を縮込ませる自律神経のような働きをF-35ロジスティクスに持たせている点が注目されている。


言いかえるならALとは「不測の事態における即応体制の維持」を意味しており、F-35に必要な機能、運用パラメータ、形態管理、保守、管理、予防措置およびヒューマンファクターなどF-35エアシステムに必要なすべての諸元を集約したALIS(アリス)と呼ばれる自律型ロジスティクス情報システムのもと、SCM(サプライ・チェーン)や世界中に分散する民間共同体のデポを通じて、不測の事態に即応する態勢を常時顧客(要求元)に提供するという概念となっている。


ここにF-35は航空機を取得するのではなくエアシステム(AS)を取得するというコンセプトがある。将来にわたりわが国の防空態勢を揺ぎ無きものにする場合、このような自律型ロジスティクス・ツールが組み込まれたエアシステムという概念を取得することの意味を改めて考えてみる必要がある。


以上のように、米国を中心としたNATO主要国やそのTier2諸国間ではF-35を次世代型ロジスティクス・システム搭載のエアシステムとして位置付けており、ライフタイムにおけるコスト削減が叫ばれる中でF-35は最大のPBLプロジェクトとして成果を挙げるために開発されたわけである。


わが国はようやくNATO Tier1加盟をなしとげ、現在PBC(PBL契約)を試行している。F-35の導入はステルス性を含む卓越した機能面によりわが国の防空態勢の強化につながることはもちろん、ロジスティクス面においてPBL効果を生むライフサイクルコスト削減の実現と国際企業連合による先進のエアシステムを手にすることができる。時代はもはやひとつの航空機ではなく、ライフタイムにおけるエアシステムの取得を標榜しているのではないかと思うしだいである。


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