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2011年09月15日

【MRとPBL】

-改めてロジスティクスを語る ー
このたびの3.11大震災から半年が経過したが、被災地での米軍活動には自衛隊も目を見張るものがあったと報じられている。被災地への救援物資の輸送や避難所の状況把握、瓦礫のなかからの人命救助。こういったことを迅速かつ合理的に行うことがロジスティクスの原点である。そのために日頃からの訓練が重要となるが、それに先立つ理念や政策、具体的なプログラムがなければ効果的な活動は生まれない。今回はわが国の被災地でも見せつけた米国ロジスティクスの理念とそのプログラムについて解説する。 (DCメール 2011年9月15日 No.301より)


■ロジスティクス政策のスローガン:MR
昨年米国防総省(DOD)はマテリエル・レディネス(MR)に関するプレゼンテーションを韓国国防省部局(DAPA)に対して行った。MRとはすべての装備システムの即応性(レディネス)を維持しておくスローガンである。アジアン・ロジスティクスでは今最も米国に近いといわれる韓国が米国と即応性の実現に向けて動き出している。既に韓国はT2(ティア・ツー)国としてNATOロジスティクスDBにも深く関与しており、韓国製のNSN装備品が世界市場で取得されている。統合された米韓ロジスティクス活動がこの東アジアで展開される日もそう遠くない。

■マテリエル・レディネス(MR)とは
このマテリエル・レディネス(MR)とは何か。MRはDODロジスティクス・システムのスローガンでありキーワードである。米国防総省(DOD)は国防副次官補レベルにおいてMR政策を横断的に実施し、陸海空軍などの指揮下にある武器システムと呼ばれる全ての航空機や艦船などの保守やシステム支援は統合されたロジスティックス・システムのもと常時作動可能な状態(これを即応性という)で維持管理している。

これは500以上もの艦船、16000にも上る航空機、1000以上もの戦略誘導武器そして25万以上もの陸上車両を即応状態で待機させるために部品の枯渇問題から保守、修理のトラブルにいたるまで、あらゆる装備品や兵器システムをライフタイムで考えると問題が山積しており、またどの問題ひとつを取ってみても無視はできない。そこで分散した要素をMRという言葉で集約し、統合化を図ることで問題解決に臨んでいるわけである。

■即応性(レディネス)とは
例えば米軍が作戦域に移動し、展開するのにかかる時間や一度に実行しなければならない任務、そしてこれらを持続するために従事する時間の長さなどを定義し、測定し、評価し、反映し、対処しなければならないという考えに立っている。適切な米軍の配備、近代化した設備、持続性等ロジスティクス活動の手段と装備品がMRに適うことで人員を訓練したり、動機づけることが可能になるとする米国政府のスローガンである。

■ロジスティクス・プログラムとしてのPBL
このMRを具体化させるプログラム要素(エネイブラ)がTLCSM(トータル・ライフサイクル・システム・マネージメント)であり、PBLである。なかでもPBLが大きな成果を挙げているのは米国が掲げるMRに対して最も経済的且つ効果的な手段であることに他ならない。

このPBLはDODが21世紀当初から主に航空機システムのMRを最適化するために、運用持続コスト( O&S )を大幅に低減させ、産業界の協力と自主努力を要請した新しい取得形態である。その運用実績は最大のプロジェクトといわれるF-35を含めすでに200を超えている。しかしPBL成否の要因はパフォーマンス(成果)を定義したメトリクス(因子)にあるといってよい。コスト削減は重要なテーマであるが成果を持続させ装備システムのMRを如何に最適化させるかがより大きな課題となっている。

PBLに取って最も重要な部分は契約業者の成果がそのまま軍の活動に直結し反映するというリスクを抱えることにある。それは多くの人命にかかわる重大な要素となっているからである。そこでPBLを推進するDCMAではあらゆる手立てを講じてそのリスク管理を徹底させている。例えばPBL契約(PBC)条項には必ず成果を評価するメトリクスの定義とその契約業者の完全なる理解が求められる。

■PBLにおけるメトリクスの選択
ここでいうメトリクスとはPBLの成果を測定する因子のことで、これをどのように設定するかが要求元(陸海空軍の部隊)の重要課題である。PBL契約は全てを契約業者の責任とするものであり、要求元ではない。しかし要求元においてさらに重要なことは成果を表現するメトリクスの策定にある。このメトリクスの選択はそれによりPBCの成否が判断されるだけに大変重要であるが、いずれにせよPBCを簡単且つ測定可能な要素にしなければならない。

つまり要求元は装備システムの信頼性や充足性、あるいは納期短縮や在庫縮小など要求元にとって重要な要因を契約業者の成果によって簡単に測定できるメトリクスとして予め策定しておかなければならないということになる。そもそもPBLの主目的が事前に計画した装備システムのMRの確保とTOC( トータル・オーナーシップ・コスト )削減の実現にある限り、メトリクスはこのように設定された目標を簡単且つ測定可能なそして識別されたものでなければならない。

■PBLのリスク管理
PBLを推進するDOD部局のDMCAでは目標を達成できるかどうかを事前にリスク評価するシステムがある。各メトリクスにはこれらのリスク・レートを設定し、ハイリスクやミドルリスク、ローリスクを定義し、識別している。PBLではリスク管理を徹底させ、例えば契約業者のシステムや活動を通して調査・分析をするなどリスク・ベース・アプローチの策定もまた重要な側面となっている。 

確かに従来からのシステムを近代化させるだけでは年率10%以上増加するといわれる運用持続( O&S )コストやシステム作動の即応性を可能にする状態の低下を招くことは避けられない。ライフサイクル・コスト( LCC )の概念では初期コストの2倍はかかるというO&Sコストを如何に低減化させるかがPBLによる取得改革の原点なのである。

例えばF-35の初期構想ではともに開発・製造コストとO&Sコストを1:1の比率までに落とすと考えられ、信頼性の向上はもちろんのこと年々上昇するO&Sコストを一定にし,また一方では運用持続において収益の鈍化を余儀なくされてきた民間企業をシステムの寿命が終了するまで安定した収益を確保できる機会を与えるというのがPBLの概念である。

このように契約企業には安定した収益に応じた責任が求められ、システムサポートを確実におこなうことの「履行保証」を求めるところがPBL契約( PBC )の特徴である。このPBCは理想的には5―15年の長期にわたり,契約企業は先を見越して例えば装備品枯渇低減策( DMSMS )のような枯渇が原因とならないような対策を施し必要なパフォーマンスを維持しなければならない。このようにしてシステム・リスクを低減させるためにライフタイム調達や契約業者との長期契約や再設計のための投資利益率などの緩和策の努力が求められているのである。

■ 成果(パフォーマンス)とは何か
ところでPBCにおける成果(パフォーマンス)とは何か。成果は定義され、識別され、誰の目にも明確に表現されなければならない。新しいMILーPRFスペックを例にとるならば要求は量的でなければならないとされている。量的なデータに基づかない要求は解釈に誤解を与えることになるからである。もしパラメタが明確に説明されていなければ提案を評価し、契約後に成果を評価することは困難であるからである。

また、要求は検証可能でなければならない。要求元は製品が作動するかを分析や試験で決定しなければならない。また検証可能な要求は契約企業をも助ける。要求元が装置の凹凸について確かめる場合それが何を意味し、どうしたら要求を満たすかがわかるからである。

それから、共通性を許容する記述でなければならない。スペックは適切なレベルで持続させるために共通性の要求を挙げなければならないが過度な要求の解決法を課してはならないからである。

そして、最後に要求は特定材料や特定過程から独立していなければならない。PRFスペックに記載される要求はスペックを変えないで材料や過程を変えることが可能でなければならないとしている。

■わが国とロジスティクス 
米国が即応性をスローガンとして最優先させる理由は世界の安全保障への挑戦を持続させるためにその政策とプログラムを劇的に変え、調整してきたことが挙げられる。ゆえに今回のような被災地への救助など米国が戦争以外のさまざまな行動に平然として立ち向かうことはまったく当然の任務として捉えられている。

米軍が自らの任務を実行できないなら米国民は米軍を疑い始め、また米軍が即応しないと米国が世界情勢に対して受け身となり、予測できない展開や攻撃を受けることになると考えているからである。

最近、防衛省によるPBL導入ガイドラインが公表された。これは防衛省による取得改革のひとつとされる民間委託の拡充への取り組みにも通じるもので、わが国防衛政策の実情に則したいわば新しい契約手法と呼ぶことができる。PBLは成果の達成に対して対価を支払うという21世紀型の契約手法であり、今後とも多くの事例を手がけることになると思われるが、PBLは字のごとくロジスティクス・プログラムである。しかしながらわが国にはロジスティクスの理念が育っていない。物流を除くといまだに兵站や後方支援といった言葉が併用されているのが現状である。ロジスティクスはそれが軍事目的であれ、非軍事(平和維持)であれ、また災害救助目的であれ、目的は違っても共通した理念が存在している。防衛のみならず平和維持、災害救助などわが国こそ世界に共通したロジスティクス理念に基づく政策とその具体的な諸活動が必要とされている国なのである。

 
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