公共スペック・公共規格 Consulting & Support Company アラート、最新版管理、調査、翻訳、取寄せサービス
TOP > On Topics > 【新入社員に贈る②】

On Topics

2011年05月15日

【新入社員に贈る②】

◆◆初めてのMILスペック( 後篇 )◆◆
前回はMILスペックの生い立ちや現在の取り巻く環境などについて紹介しましたが、今回( 後篇 )はMILスペックの内容や構成について話します。MILスペックは数ページのものから数百ページに至るものまでさまざまですが、基本的な構成はどれもほぼ同じです。どう同じなのでしょうか。今回はこれを少し掘り下げてみましょう。(DCメール 2011年5月15日 No.293)


■初めてのMILスペック( 後篇 )
まず最初に、初めにMILスペックに出会うといろいろな表記形式のスペック番号があるのですね、これらの意味を知っておくと大変便利です。

一般的にMILスペックの表記形式はMILーWー12345のように最初にMILスペックであることを示すMILで始まり、次にスペック・タイトルの頭文字であるWが続きます。Wは例えばWood(木材)やWrench(レンチ)だったりします。W以外にも様々なアルファベットが付きますがすべてスペック・タイトルの頭文字です。このMILスペックは米軍が装備品などの開発や調達をする際要求に合った手順や品目、材料および役務についての技術要求を記載するもので、数ある表記形式の中でも一番数が多く、ゆえに総称してMILスペックと呼んでいるのです。

次にMIL―STD-1234という形式を紹介しますがこのSTDはStandard(規格)の略称です。これをMIL規格と呼びます。規格ですから装備品の作業計測において比較が出来るように規則、規範あるいは評価基準を表しています。MIL規格はMILスペックと共に利用されます。

また最近ではMIL-PRF-1234のような新しい形式のMILスペックが増えてきました。これはパフォーマンス・スペック(性能仕様書)と呼んで従来からのMILスペックと区別しています。PRFはPerformanceの略称です。性能仕様書は必要とされる結果についての機能要求事項を記載し、評価基準を提示していますがそのための方法論は論じません。その意味で従来からのMILスペックとは一線を画しているといえます。従来からのMILスペックは方法論まで細かく論じて要求していましたが、現在では非効率、高価、無駄等の批判があり、徐々に他の形式のMILスペックに代替されつつあります。

さらにMIL-DTL-1234という形式もあります。これも新しい形式のMILスペックでディテール・スペック(詳細仕様書)と呼ばれパフォーマンススペックと区別されます。DTLはDetailの略称です。詳細仕様書は使用される部材や要求の達成方法、製造方法などの設計要求をしている仕様書で性能要求だけではなくその方法論についても記載しています。いわゆる従来からのMILスペックの後継者で必要に応じて方法論に言及していてその意味でPRF型スペックと対峙しています。

DOD-A-1234はメートル法で記述されたMILスペック(米軍仕様書)のことです。一般にMILスペックはインチ・ポンド法で記述されますがDOD-A-XXXは米国政府のMetric法(メートル法の推進)の制定によりメートル法で記述されたMILスペックです。なおDOD-STD-XXXXはメートル法によるMIL規格です。

そのほか、TT-P-1234のようにMILが付かないスペックも多数含まれていますが、これらはFederalスペック(米国連邦政府仕様書)といい米国連邦政府があらゆる省庁、地方公共団体の要としてMILスペック同様に個別の仕様書や規格を作成しています。フェデラル・スペックは番号の前に2種
類の英文字を連ねるのが一般的です。なお英文字は3文字まで使用されそれぞれ決められた分野の物品を表します。

またMIL-HDBK-1234やMS1234、FED-STD-1234、A-A-1234、DI-1234など様々な形式のスペックが存在しますがこれらについては別途紹介しましょう。

ところでMILスペックには表紙があるものと無いものがありますが、これは20ページ以上のスペックには表紙をつけることになっているからです。 MILスペックの目的は経済的なコストで特別の要求を満たす物品や役務を適正な競争で取得するために過度の限定はしないことにしています。良いMILスペックとは ①最小の要求を識別できる ②複製の試験方法を使用する ③競争入札を考慮する ④安いコストで公正な入札結果に備える等の約束事により書かれています。ですからMILスペックを作るということは注意深い分析と正しい判断が要求される困難がつきまとう作業なのです。

それでは次にMILスペックの内容についてセクション順に紹介しましょう。セクションとはMILスペックを構成する内容を1から6までに区分けしていることを言います、1.1とか2.1.1.2とかまたさらに詳しい項目では3.2.3.6.4等と細分化されたセクションがあります。

先ず表題ですが、この表題の書き方にはルールがあります。「美しい花」を「花、美しい」のように記載することが決っています。これは非常に重要なルールです。これによりMILスペック番号のアルファベットが決定されるからです。例えばこの場合、花はHANAですからHで始まり、このHがMILーH-XXXXX のHとなるのです。「土手の美しい花」は「花、美しい、土手の」というように覚えてください。

さてMILスペックで最初にくるセクションは1.SCOPE(範囲)です。このセクション1.は品名やその修飾語を用いてそのMILスペックの記載される範囲を簡潔に表現しています。しかしこのセクションでは要求や数値、図表といった具体的な内容は織り込まれません。こういった内容はその後で順序だてて表現されています。

次のセクション2.Applicable Document(適用文書)はMILスペックの特徴のひとつです。MILスペックはスペック・ツリーと呼ばれるツリー(木)構造をした関連文書の呼び出し方式を採用していることは有名ですね。この呼び出すスペックや文書はすべてこのセクション2.に記載することが義務付けされています。具体的にはこのMILスペックの要求を満たすか、あるいは要求を満たすのに有用な情報を提供するために必要な文書だけをリストしなければならないとされています。ですから文書が単に例としてあるいは背景的事項に対してのみ引用される場合はセクション2.にリストする必要はありません。

その次のセクション3.要求(Requirement)はそのセクション4.の立証(Verification)と共にMILスペックの中核です。その記述方法は時代の流れにより大きく変化しますがセクション3.は、受諾を可能とする要求を定義して記述するものとされています。要求項目の証左内容についてはここでは省きます。

セクション4.の立証(Verification)は要求セクションと同様に重要なセクションです。このセクション4.はセクション3の要求のために行なわれるすべての検査を記述しています。立証とは分析、デモンストレーション、検査、試験あるいはその他任意の組み合わせによって遂行されることを意味します。また別段の定めがない限り検査はすべて適用可能な試験方法の文書、あるいはパラグラフに指定された試験条件に従って行なわれるものとしています。

セクション5.のパッケージング(PACKAGING)は取得の目的にかなうように、パッケージングに関する要求が契約書や注文書に記述されます。

そして最後のセクション6.の注記(NOTES)はMILスペック・ユーザの誤解が多いセクションです。このセクション6.の記述形式は上記の各セクションとは違って「Should]形式で書かれることに注意してください。日本語では「することができる。」と訳しますがこのセクション6.はユーザへの支援、すなわち注記です。ですから記載内容はスペックでもなければ規格でもありません。よってセクション6.の内容はユーザにとって有用ですが義務ではないということです。ユーザからよく質問されますがセクション3で記載している内容とセクション6.で言っている内容に齟齬があるといいますが、セクション6.で言っていることはあくまでも注記であって要求ではないということを理解する必要があります。

このような構成と内容をもつMILスペックですが、同時に多くの変更や改訂および移行などが繰り返えされることを最後にお話しましょう。MILスペックは改版(REVISION)や修正(AMENDMENT)、補足(SUPPLEMENT)、そして通知(NOTICE)など多種多様の文書変更が繰り返して起こりまた文書形式が存在します。

なかでも「廃止通知」(CANCELLATION NOTICE)は最も重要で、現存するMILスペックがもはや要求されない場合に発行されます。そして必要に応じて代替(Superseding)情報を掲載しなければなりません。ちなみに廃止通知には大別して2種類あります。代替スペックが「ある」場合と「ない」場合のことです。最近ではMILスペックが民間スペックのSAEなどに代替されるケースがあります。また新しい形式のMIL-PRFに代替されるケースもあります。代替が無く廃棄されるMILスペックも数多くあります。これらの古いMILスペックによって製造された物品は製造が中止され入手が困難となります。また代替スペックが民間スペックになる場合は、当該民間団体があらたにスペックの改訂作業を受け継ぎます。これらDODが採用した民間スペックをDOD採用民間(DOD ADOPTED)スペックと呼んでMILスペックからの代替スペックとして区別しています。

そのほか無効通知(INACTIVEはある品目やプロセスが新設計向けの使用に禁止され、既存の契約にのみに用いるられることを示唆するものです。この通知が発行されたスペックはいずれ廃止されるものと思ってください。ですから新しい開発や設計には使用できません。言ってみれば廃止するための経過措置のようなものです。ただし現存する装置を改めて生産したり契約したりする場合には使用することができます。また無効通知には新しい代替スペックを引用する場合がありますが、これらの代替文書は従来スペックとは異なるスペック番号を持つのが一般的です。

MILスペックのユーザの多くはこれらスペックが廃止されたり、無効となった場合、その代替スペックが気になるところですが代替スペックが用意されないケースが多いことも事実です。結局時代の変化により技術的にも古くなり、またコストがかかるなどゆくゆくは廃止されるスペックに代替スペックはいらないということを制定元では考えているのです。

前回に引き続き2回にわたり、新入生諸君のためにできるだけわかりやすく紹介したつもりですがまだまだ書き足りないことが沢山あります。このメールを読まれて疑問に思ったことやわからないこと、そして実際に使用してみて問題にぶつかったことなどなんでも結構ですからお聞きになりたいことがあれば遠慮なくご相談ください。

【お願い】本誌の性質上、出来る限り日本語にしてお伝えしておりますが、適訳であるとは限りません。また、紙面の都合上全ての原文を引用できない場合があります。なお、本誌は参照情報源としてだけ使用されるものであり、完全性や正確さを保証したり主張したりするものではありません。また本誌に記載された内容を無断で引用または転載することは禁じられています。