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2011年03月15日

【 NSN登録 】

-装備品ビジネスの専門機関創設を望む-
わが国の装備品メーカが国際的に自社製品を供給するためには、わが国が国レベルでNATO装備品システム(NCS )に参加して、しかもTier2(ティア・ツー)という厳しい審査基準レベルを取得しなければならない。NATOによればわが国がNCSに未加入であったためにいままで多くの日本メーカは他国の登録機関を通じて登録してきた。今回は先の小紙258号で紹介した記事を更新しながら、今後のわが国の装備品ビジネスの在り方について提言する。(DCメール 2011年3月15日 No.289)


■27カ国で登録するわが国メーカの装備品事情
NATOの報告によるとわが国のメーカが海外の27カ国において登録した装備品件数は約82000件にもおよぶ。( 2009年NATO調べ )そのうち多くは米国、フランス、カナダ、イギリス等といった欧米諸国であるがなかにはオーストラリアや韓国、シンガポールといったアジアのTier2諸国も含まれている。これはどういうことだろうか。これは即ち米国やフランスあるいは韓国やオーストラリアに進出したわが国装備品メーカが当該国のNCB(登録機関)を通じて自らが製造あるいは販売する装備品を世界的に供給するために登録してきたことを物語っている。登録するためには事前に企業コード( NCAGE )の取得をしなければならないが輸出業務や海外進出をしている装備品メーカは基本的に取得済みであるから問題はない。それよりもこのようにしてわが国で登録できない装備品メーカが他国で登録している現状にある。これはまさに「流浪の民のごとし」であるが、これも装備品メーカに言わせれば生きるための知恵に過ぎないという。


■ところでNATO装備品システム( NCS )とは何か。
今やNCS は世界最大の装備品データベースとして世界38カ国、1600万件のNSN、3300万種類のメーカー装備品が収録されている。このNCSの基本は米国のFLISであるがFLISの場合は米国市場のみであるからNCSはまちがいなく世界最大の装備品データベースである。そもそもNCSやFLISなどロジスティクス情報の最大の目的は取得が迅速に行なわれることで装備品の欠落時間を短縮できることにあるが本当の価値とはNSNに取り込まれた各種要素データにより、在庫の確認、保存期間の識別、交換・代用可能な供給物品の識別、利用可能な代用品の最大限使用、価格情報の提供により防衛予算の最適化、武器システムのライフ・サイクルを拡張し、設計、製造および修理プロセスのためのサイクル・タイムの改善、機密情報を保護し、多数の調達業者の登録、重複物品の識別援助などが最適に行なえることにある。NATOのデータベースが最も重要で最も遠大なメリットは装備品市場が世界のNATO諸国ならびにアジア地域の諸国を巻き込んで多極化するなかで装備品の取得要求から保守、そして廃棄に至るまでのライフ・サイクル管理を提供することが可能となる点にある。


■何故NSNが重要なのか。
そこで重要なのがロジスティクスのDNAと呼ばれるNSNである。FLISやNCSはNSNの集合体である。このNSNは米国やNATOを中心に現在では世界の55カ国で採用されている装備品識別の最小単位である。NSNは必ず13桁の番号が付与され、物品名、識別データ、管理コード、参考価格、性能データなど多数のロジスティクス情報が組み込まれている。NSNの数は米国だけで700万件を越すと言われ、NATOやその他の関係国を含めると1600万件にも上る膨大な数である。このNSNの最大の特徴はなんと言ってもこれら加盟国のメーカにより生産される装備品、例えば航空機部品から生活必需品に至るまでの互換品や代替品情報が掲載されていることである。その結果これら生産財や消費財情報など民間製品の数はNSNの数倍となり3300万件にも上るといわれている。DODによればNSNの総合コスト概念はNATO諸国や国連( UN )における物品取得のオプティマム・ツールとして世界最大の利用者を抱えるまでに膨れ上がっているという。WebFLISを管理する米国もわが国が本格的にNCSに参入しNCBを創設しNSNを取り込むことを提唱している。LCC(ライフサイクル・コスト)概念を掲げるわが国防衛装備品行政にとって本格的なNSNの運用は避けては通れないデファクト・スタンダードとなっている。


■ところでわが国はどうなっているのか。
わが国は現在正式なNATO援助( sponsorship )国ではない。しかしNATO主催のNCS定期会合にオブザーバとして出席しており、こういった動向をその端々で察知している。世界を席巻する装備品の共通化、補給業務の統合化は米国を中心として急速に進化しており、隣国の韓国ではすでに産官学が一体となって新たな次世代装備品システムの研究に着手している。


現在わが国ではTier2の前段階にあるTier1(ティア・ワン)加盟に向けてその準備を進めているとのことであるが、自衛隊が保有する170万品目ともいわれるわが国防衛装備品データのNSN化、国際共通化は真の同盟の証ともいうべきテーマであり、また今後のわが国防衛産業界の浮沈をかけた最重要課題である。最近日米、日豪、日韓によるACSA協定の広がりがマスコミを通じて国民に知らされるところとなったが、すでに米国を中心としたNATO主要国や豪州や韓国を筆頭とするTier2国は次世代NCS導入に向けて研究に余念が無い。しかしながらわが国においては次世代化はともかく、未だ防衛省はもとより経産省においてさえもNCSに関与する研究が立ち遅れており、産官学を通じた装備品ロジスティクスを論じる場が無い。このことを考えるに付け余りの乖離に切歯扼腕の思いである。


世界はすでに生産から廃棄までを含む装備品ビジネスはお互いに多国間で共有・管理されたものとなり、わが国のように国内の監督省庁( 防衛、外務、経産、国交省 )が綱引きをしているものとは大きく異なる。またわが国の装備品登録を自らが行なえないことが、わが国装備業界が孤立し、育たない遠因ともなっていることが大問題である。このことはわが国の秀逸な資材や部品、需品などの装備品の世界市場でのビジネス機会損失を意味し、逆に高額で、品質や納期に問題の多い他国品を購入しなければならない背景となっている。

 
わが国は装備品というと単純にエンドアイテムとしての武器類を連想するが、FLISやNCSの世界では1600万種類あるNSNの、またその下にある3300万種類の製品のほんの一部でしかない。大多数は素材であり、電子部品であり、機構部品であり、そしてまた被服などの需品なのである。NATOによれば今後はさらに国連( UN )が加盟し、また未加盟国を巻き込み、また装備品以外の製品分野もを取り込む壮大な計画があるという。そのためには参加国はNATOの定める整備能力を構築しなければならない。わが国はこの分野において10年は遅れているといわれる。装備品は膨大且つ細かい。まさに鉛筆からミサイルまでを識別化した装備品体系( FSC )である。それを一言で武器輸出に喩えるような時代感覚ではとてもなし得ない。なおここで報告された27カ国での日本メーカの装備品の詳細は明らかではないが、登録される全世界の装備品件数に比べてあまりにも微量であり、また他国を通じて登録するという現状をなんとか打破しなければならない。やはり装備品を体系化し世界と伍していくためには米国のDLAや韓国のDAPAのような装備品をビジネスとして標榜する民間の発想をもったわが国専門機関の創設がまさに必要であることは間違いない。

 
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