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2010年11月01日

【米国防標準化政策の変遷】

-米国は変わったかー
5年前ワシントンDCで開催された米国防標準化(DSP)総会に出席した際に、米国とNATOの標準化協定(ISA)式典に参列する機会を得た。 その時の彼らの得意満面の笑顔は今も目に焼き付いて離れない。30年来MILスペックと共に歩んできた筆者にとってそれまでの米国は将に孤軍奮闘というか独り舞台であった。しかし今日米国は多数の同盟国との相互運用性の構築による広域且つシームレスな標準化体制の確立に余念がない。わが国が米国と同標準化協定を結ぶ結ばないは別にして、同盟国である以上より一層の(標準化情報の)相互運用性が求められることは避けられない。(DCメール 2010年11月1日 No.280)


■米国の国防標準化政策について

当メルマガでは当時(5年前)の米国とNATOの式典の様子を次のように 伝えている。 「米国防標準化総会は米国防総省(DOD)の各機関や海外諸国との統合化(CONSOLIDATION)や連携強化(JOINT EFFORT)といった政策を相次いで打ち出し、また新しい標準化ツールなどを構築して積極的に業務の効率 化と統合化を推進していることをアピールした。 米国はこういった連携強化や統合化が今後とも世界各地における紛争解決あるいはテロの撲滅のために、もっとも効果的なロジスティクス・サポートになることを信じて疑わない。なかでもDODの標準化文書であるMILスペックを中核として関係各国の標準化文書との連携や統合化は、世界の国防標準の担い手として自負する「パックス・アメリカーナ」にとって最優先課題なのである。  

 しかし一方では米国は標準化統合計画を遂行するための十分な時間や人手および予算が削減されており、その結果具体的な業務計画が遅れていることが問題視されている。また地味な活動であるがゆえに政府高官の意識の低さや認識不足がDSP責任者らの不満の種となっている。こうしたジレンマを抱えてのパネラーによる報告は、逆に多発する国際紛争やテロ 活動へのアメリカの使命感といった意識の高揚や熱情といったものを強く 感じさせた。  

 また米国は標準化統合活動を通して各国との意識の違いを感じている。 例えば「規格とその利用」について各国を例に挙げて「文化の違いにより 解釈が異なる」ことに苦慮している。例えば規格において米国は禁止され ている以外は許可されると解釈するが、ドイツは許可される以外は禁止されると解釈する。ロシアは許可されても禁止されるとしている。またフラ ンスは禁止されていても許可される」と解釈するとしている。  また米国のいう「国防標準の国際化」とは英語圏諸国やヨーロッパ諸国 を意味しており少なくとも現在までのDSPでは日本を含むアジア諸国については言及をしていない。  

標準化とは共通化、一元化である。防衛に関する他国との共通化は文化 的にも、政治的にも非常に困難であり、米国はそれを超越して「侵攻」している事実は米国以外の各国の共通した問題意識があるからである。米国は二国間あるいは多国間として日本を含む東アジア地域に同様な標準化統合 政策を展開するはずである。それが米国にとって真の統合政策(JS)となる からと考えているからである。

 ■MILスペック改革とその後の変遷

 米国は1994年当時の国防長官による取得改革(Acquisition Reform)のなかで、新しいスペック・スタンダードのあり方と題する通達を出した。これがいわゆるMILスペック改革と呼ばれる。この序論で米国政府は将来のために国を挙げて民間の最先端技術の導入と民生品の採用し官民の統合による安価で防衛ニーズにあった産業基盤の拡大を目指すとある。

この 新しい方向で重視されたことがDODにおける従来からの慣習の打破で あった。そのひとつにMILスペック環境における慣習があった。特殊ゆえ に硬直化した組織や機能そしてこれにより産業は停滞し不要なまでの性能や形式化された試験方法や監督検査などが温存されていた。そしてなによりもお金がかかることが大きな問題であった。 改革された主な内容を見ると不要なMILスペックは段階的に廃止し代わりに民間規格を登用した。民間規格を採用することはMIL品から民生品に切り替えるということである。

またできるだけ随意契約を避け 競争入札制度を取り入れている。またMILスペックを利用する場合も 出来るだけ参照源を減らし従来からの「プロセスを指定した」考えから 「結果」のみを問うような形式に変更した。PRFスペック(Performance  Specification)はこの代表例である。このように米国は国家事業として MILスペックを含む標準化(Standardization)改革に挑み不要な贅肉 や老廃物を削ぎ西暦2010年計画はもとより300年後に向けて多くの 先人が成してきた遺産を大切に継承していかなければならないと した。

そしてさらに2005年3月29日付けDOD通達で上記に施行された MILスペック改革によりMILスペックを取得・調達契約に適用する 場合は事前にMDA(Milestone Decision Authority)による特別な 認定(Waiver)を受ける必要があったが、この通達はその方針を改め事前に承認なくしてMILスペックの引用ができるようにした。なおこの特認制度はMILスペック改革により誕生した制度で、従来からのMIL スペックを契約で適用させるためにはその理由を添えて事前に申請 をしなければならない特例措置となっている。そこでこの通達はこの MILスペックを適用する上での特例措置を削除したものである。 なおこのような方向転換がなされた理由について2001年の同時多発テロがアメリカの国防ビジョンを大きく変えたと言われている。 また先のMILスペック改革は主に資源不足からくるもので逆に 民間品登用による問題点も浮上していた。そこでMILスペックと民 間規格を得意の分野や項目によって「すみ分け」させることで新たに MILスペックの再活用(Revitalization)を図るようにした。 

 ■今日の国際標準化協定

DODが目指す国際標準化協定( ISA )とはDOD主導による同盟 諸国との相互運用性の構築による広域且つシームレスなロジステ ィックス体制の確立にある。DODのISA推進計画によると米国は これら国防標準化政策を広く同盟諸国へ推進することで相互運用性を高め一貫した同盟諸国間の国防取得計画の実現を可能にすると している。

同盟諸国の標準化とは装備品やその手続き、戦術および主義など 多国籍軍がともに効果的に作動するために重要な成分の1つであり、 実行可能な範囲は基本的な米国国防の基本方針となっている。 相互運用可能なシステム、交換可能なシステム、あるいは共通 システム、サブシステム、設備、ソフトウェア、コンポーネント、部品、 およびコンサルテーションを含む消耗材、 コマンド・コントロール( C3 )、 弾薬、燃料、供給などいくつかのものあるいはすべてが同盟国の中で互換性をもつ運用構成となっている。  

このISAは相互運用の保証としてまた同盟国との作戦即応性や協力に とって重要である。 ISAは統合や連合作戦を増加させ、情報技術を 達成させ、後方支援を改善し、そして技術的な洗練を増強させる。 その運用上の要求を保証するために連合作戦は識別され、文書化され、 利用可能で、容易に作られることが重要となる。現在米国は多数の 同盟国と協定を結んでいるが活動のほとんどは次に示す5つの主な 組織に基づいている。

■北大西洋条約機構( NATO ) NATOは 北アメリカとヨーロッパの26カ国 また23の平和のための 協力協定国で構成された同盟である( 数字は2007年 )。NATOの 基本的役割はその加盟国の自由および治安を政治的・軍事的手段に よって保護することである。米国法( USCTitle10、セクション2457 ) では米軍が北大西洋条約の下のヨーロッパで使用されるために取得 した標準化設備が他のNATO加盟国によって使用される設備と同様 の目的のために相互運用に必要なレベルまたは程度とされることは 米国の政策であるということである。さらにDODはより大きな主義 および戦術互換性に到達するためによりよい基礎を提供している。 NATO標準化機構では標準化を有効にする権限、要求、また従属 する部隊を割り当てること、標準化に関連する活動に作用すること などが業務となっている。  

■米英加豪陸軍連合( ABCA ) ABCA( AMERICAN、BRITISH、CANADIAN、 AUSTRALIAN軍 )は 相互運用と標準化を促進する国際的なプログラムである。米軍および 英国、カナダおよびオーストラリアの各軍はABCAにあるプログラムが 相互運用上連合力の能力として定義され、適切なパートナーとして また割り当てられた使命の実行とともに訓練される。ABCAのための 任務遂行プログラム・オフィスは米陸軍にあり、ABCAによる成果物で ある相互運用を増強するための規格、出版物、データベース、また 援助を報告する。またプログラム・オフィスにこれらの成果物は管理 される。  

■航空宇宙空軍相互運用会議 ( ASIC ) ASICは旧航空標準化として知られていたオーストラリア、ニュージ ーランド、カナダそしてアメリカが結合した調整委員会をASICとして 位置づけ国際的な空軍組織を含む構成となっている。現在と将来の 航空宇宙における増強やミサイル、戦争能力などを共同 連合した 相互運用性を高めることがASICの使命である。また目的は標準化 によって実現される。ASICの任務はワーキンググループおよびプロ ジェクト・グループ構造による遂行となっている。  

■通信電子会議( CCEB ) CCEBはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、そして 米国が結合した通信電子会議である。結合した5カ国は各加盟国 からの共同の軍事通信、エレクトロニクス( C-E )構成、コマンド およびコントロール、コミュニケーションそしてコンピュータ( C4 )から 成っている。  

■海軍C4機構( AUSCANNZUKUS ) AUSCANNZUKUSはオーストラリア、カナダ、ニュージーランド そして米国の海軍のC4機構( AUSCANNZUKUS )が結合して 生じたもの。共同戦闘を成功裡に終える使命のために各国の知識 共有を横断的な組み合わせにより促進させている。作戦や一連の ドキュメントのもとでネットワーク・ワーキング・グループが概念を創出 している。   

■相互認定品運用制度

 米国と他のNATO諸国間では認定品の相互運用制度がSTANAG4093 によって定められている。米国では自国のQPLやQML製品のリストをNATO諸国の仕様書に運用できるようにしている。また同盟国からの QPLの受理や認定業務の受理もおこなっている。 DODが取得で使用 する同盟諸国の認定品仕様書を受理する場合、国際協定によって準拠される場合以外は管轄する全米認定機関( NQA )が同盟諸国のQPL やQMLを決定している。また製品情報も同盟諸国の認定承認の根拠 となるために試験データ等が必要とされることもある。これらデータには テスト手順や試験装置、方法、測定および完全な試験結果、計算およ び分析の日付およびテストする職員や他の記述なども含まれている。  

DODの認定に追加データや試験が必要な場合は、米国NQAが通知 をする。DODが手続きや規則を提供することで、相手国のメーカは要求 される認定評価や認定承認に使用な仕様書により追加試験を受け認定 されることができる。これらデータを提出するコストに対する責任はその メーカーと米国NQAの間の交渉で決定される。なお米国NQAが相手国メーカーの製品を削除する場合は、相手国NQAにその理由を通知しなけ ればならない。DODはこれら同盟国との認定制度の確立や相手国の メーカーや製品の維持を図るようにすることが求められている。