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2009年07月17日

米国依存からの脱却を標榜して

MILスペック概論
わが国のMILスペック・ユーザ(以下、ユーザ)はスペックに記載された言葉のひとつひとつを理解し、正確に把握することが求められているが、多くの場合十分な対応がとられていない。その理由は色々あるが、いずれにせよその結果ユーザがこうむるトラブルの多発、コストの増加そして信頼性の低下など目に見えない被害がユーザの成果を大きく妨げていることは事実である。防衛標準の分野において、わが国は益々国際協調化、共有化が求められている。また、国内には新たな事業機会を求めて参入する企業もでてきた。そこで、改めてMILスペックを概観したので是非ご一読ください。【DCメール】 2009年7月15日 No.249


■MILスペック概論 -米国依存からの脱却を標榜してー
 
 7月15日現在、MILスペックは31,048件からなっている。(注) この数はここ数年大きな動きは無い。一時はMILスペックが無くなるのではないかという噂が立ったが、それも間違いで2005年の再活性化宣言によって、ここ数年むしろ増加傾向にあるといえよう。
注:ASSIST調べ。

 さて世界の技術標準の分野において、これほど膨大でかつ厳格な標準化文書は類例が無い。また頻繁に改訂や修正あるいは移転が繰り返され、ツリー構造をした参照文書方式であることも大変ユニークである。こういったことがスペックの利用者や管理者にとっても大変わかりにくく、ゆえに誤解されている部分が多いのである。

 わが国のユーザは総じて必要なスペックが改訂されるたびに内容を精査し部品や材料を決定するが、現実問題として受入検査時などで多くの問題が生じていることも事実である。その理由の多くは十分にスペックを理解していないことに起因している。ユーザがこれらの問題を解消するためには、環境を整備してスペックに関する情報収集能力や理解力、問題解決能力を高めることはもちろん、関連部門や取引先に対しても知識レベルの向上、問題解決能力のスキル・アップなど、横断的な意識改革を徹底する必要がある。このことは弊社がコンサルティングをしているユーザがこれらの問題を解消しつつあることが何よりもその事実を明らかにしているからである。
 
 
■わが国と米国防標準化政策

 近年米国防総省(DOD)は自国だけではなく多数の同盟諸国との間で国際標準化推進活動を強化してきており、NATO諸国やカナダ、オーストラリアといった文化的にも米国に近い同盟諸国は米国主導による新しい標準化活動や取得改革を通じて相互運用性を高めており、着実に防衛標準化体制の強化を図っている。

 このような流れは今後益々国際化し文化的にも異なるアジア・アフリカ諸国を幅広く覆うものと考えられる。事実、韓国やシンガポール、フィリピン、マレーシアなどでは米国からの後方支援情報の恩恵を受けているが、標準化政策においても同様な環境下に置かれつつある。

 わが国は現在米国と同盟国でありながら、わが国の特殊事情によりこのような枠組みには参加できず、したがってわが国の防衛標準化政策にとって必要不可欠な米国とのシームレスな標準化構想や、STANAGなどの国際標準化情報の供与に対しての恩恵も受けていない。こういった細かい詰めの甘さが、わが国の防衛標準化業務を益々遅滞させ孤立化させることになっている。
 
 
■米国の国際標準化構想とは何か

 DODが目指す国際標準化とは、DOD主導による多数の関係国との相互運用性の構築による、広域且つシームレスな標準化情報を含む後方支援体制の確立にある。2005年に改めてDODは、MILスペック運用重視の方針を打ち出した。また、従来からの認定品目表(QPL)を全面的にデータベース化(QPD)し、MILスペックとその関連部品をエンドアイテム別に統合化した情報システム(WSIT)を構築するなど、DODは世界的なレベルにおける取得・調達システムの構築を推進している。

 1990年代におけるMILスペック改革により、多くの民間規格が採用され、一時はMILスペックの運用が減り、またMILスペック件数も大幅に削減されたが、911のような新たな脅威に立ち向かうためには民間規格とは一線を画した新しいMILスペックの創生が必要であるとした。こうした新しい気運の高まり、MILスペック改革によって生じた「ほころび」を是正し、新しい時代に向けた調達改革の創設につながるものと期待されているのである。

 この新しい方向付けは、米国政府が従来から国防予算の増大を防ぐため民活導入を推進してきたが、テロを境に再活性化(Revitalization)を旗頭に「新たなMILスペックの創設」を推進し始めたものとして、画期的なIT技術を取り込んだ取得・調達支援システムの台頭とともに、今後益々その存在を高めるものとなろう。

 ところで、わが国の防衛・航空宇宙分野における標準化活動は、MILスペックや海外航空機メーカのスペックに依存してきたために自ら整備する意識が不足しており、今後ともデファクト標準としてのMILスペックを常時把握できるように、モニター態勢の整備を検討する必要があるとされているが、現実問題としてこういった米国主導の標準化体制には追随しておらず、方向性を見失っている感が強い。(注)
注: 日本工業標準調査会編「航空・宇宙機技術分野における標準化戦略」

 なかでも近年のDOD標準化情報の開示能力が格段に上がったにも拘らず、民間企業はともかく、監督官庁もその情報活用がままならず、折角の恩恵を受けられないことは誠に残念でならない。国防あるいは防衛という観点においての技術標準化政策は、地味でありながら取得や調達を支える重要政策である。日米同盟というからには、こういった分野が共有化されることによって初めて機能するものである。このような指摘が10年も前にされておりながら、一向に改善されていないのは相変わらず米国依存からの脱却がされていないと言われてもしかたがない。
 
 
■MILスペック改革について

 DODは、1994年に当時のペリー国防長官による取得改革(Acquisition Reform)のなかで、新しいスペック・スタンダードのあり方と題する通達を出した。これがいわゆるMILスペック改革と呼ばれている。この通達の序論で米国政府は、将来のために国を挙げて民間の最先端技術の導入と民生品の採用し官民の統合による安価で防衛ニーズにあった産業基盤の拡大を目指すとしている。

 この新しい方向で重視されたことがDODにおける従来からの慣習の打破であった。そのひとつに、MILスペック環境における慣習があった。特殊ゆえに硬直化した組織や機能、そしてこれにより産業は停滞し、不要なまでの性能や形式化された試験方法や監督検査などが温存されていた。そしてなによりもお金がかかることが大きな問題であった。改革された主な内容を見ると、不要なMILスペックは段階的に廃止し、代わりに民間規格を登用した。

 民間規格を採用することは、MIL品から民生品に切り替えるということである。また、できるだけ随意契約を避け競争入札制度を取り入れている。MILスペックを利用する場合も出来るだけ参照源を減らし、従来からの「プロセスを指定した」考えから、「結果」のみを問うような形式に変更した。PRFスペック(Performance Specification)はこの代表例である。このように、米国は国家事業としてMILスペックを含む標準化(Standardization)改革に挑み、不要な贅肉や老廃物を削ぎ、西暦2010年計画はもとより300年後に向けて多くの先人が成してきた遺産を大切に継承していかなければならないとしているのである。
 
 
■MILスペック運用に関するDODの新しい方針

 しかしながら其れから約10年後の2005年3月29日付けDOD通達で、それまでのMILスペックを取得・調達契約に適用する場合は事前に特別な認定(Waiver)を受ける必要があったものを改め、事前承認なくしてMILスペックの引用ができるようにした。

 このような方向転換がなされた理由について、2001年の同時多発テロがアメリカの国防ビジョンを大きく変えたと言われている。また先のMILスペック改革は主に資源不足からくるもので、逆に民間品登用による問題点も浮上していた。そこで、MILスペックと民間規格を得意の分野や項目によって「すみ分け」させることで、新たにMILスペックの再活用(Revitalization)を図るようにしたのが新しい標準化の流れとなった。
 
 
■米国政府の装備品取得制度

 DODでは、装備品の識別は購入から廃棄に至るまでその単一品目の全ての機能(購入、運用、保管、配布など)を用いることが法により定められる。これは1952年に施行された米国連邦政府によるカタログ制度の序文に掲げられている。1952年といえば日本では昭和27年である。当時日本は廃墟の中からようやく立ちあがりかけた年であった。サンフランシスコ条約が発効され、GHQが廃止されたのもこの年である。米国ではすでにこのようなコスト削減策の一環として装備品カタログ制度が始まった。

 米国連邦政府による物品調達目録制度(Federal Catalog System)いわゆるカタログ制度は、米国政府の装備品調達の基盤となっている。DODの調達マニュアルによると米国議会は1952年に公法82-436条としてカタログ制度の導入を図り、単一品目の識別により購入から廃棄に至るまで全ての機能(購入、運用、保管、配布を含む)を用いることが確立された。またそのために、DODでは効率的且つ効果的なコスト削減による供給管理体制を敷くことを決めた。これが米国連邦後方情報システム(FLIS)の先駆けとなったことは言うまでもないことである。
 
 
■取得と調達 

 取得は英語のAcquisitionからきた訳語で、「物品やサービスをその概念、創始、設計開発、試験、契約、生産、配備、後方支援、変更、廃棄、補給などライフサイクルとして捕らえた言葉」である。その点で調達(Procurement)や購買(Purchasing)とは意味を異にする。米国では早くからAcquisitionに対する概念が導入されており取得規則(Acquisition Regulation)が整備されている。
 
 
■防衛に関する民間スペックのあり方

 MILスペックを民間規格に置き換える、いわゆるMILスペック改革は本日現在、上記のMILスペック31,048件中、8、731件もの民間規格を採用していることに表れているといってよい。(注)
注:ASSIST調べ。

 しかしDODの民間規格の採用傾向は、数の上ではここ数年は大きな変化は無く、むしろ新しいMILスペックの採用に逆戻りする傾向もある位である。

 MILスペックが民間規格に代替(Superseding)する際に、必ず起こる問題としてMILスペックと民間規格は何が違うのか、という質問がある。そこで最も代替が多いひとつとされるSAE-AMSの立場から説明しよう。

 AMSスペックは多くの製造メーカとそのユーザからの総意で成り立っている。その意味でAMSスペックは「表記されたこれらメーカやユーザの総意」であるといえよう。AMSスペックは、これらメーカやユーザの自由意志によるスペックであるともいえる。そしてAMSスペックはこれら技術者に対して有益で、補助的な情報として利用されるものである。

 この「スペックの利用」に同意するということは、即ち経済的において無駄を省くことがすべてであるということである。AMSスペックに表示された寸法や製品特性は、SAEが総括的に検討を図ったうえ、すべてを考慮した結果の表記となっている。またすべてのスペックは、記述的に、また技術的に有効であることを保証するために、5年ごとの定期的な見直しが行われることとしている。

 AMSスペックは技術的にいかなる先端性があっても、必ずしもスペック改訂の要因とはならないが、設計や製造にはお金がかかるだけにコストに関する要因はスペック改訂の最も基本的な要因となっている。AMSスペックは、航空宇宙分野における原材料の製造や使用を単純化することで大いに貢献している。製造メーカとユーザは一致協力し、自発的にAMSスペックを使用することでお互いに協調している。生産無くして使用もありえず、双方の努力は欠かせないところである。
 
 
■言葉遣いの違いに注意せよ。

 MILスペックとこれら民間スペックとの違いを端的に表現するなら、言葉の使い方が違うことを知らなければならない。例えば、MILスペックでは、Shallという単語が多く使われる。Shall は動詞の強調であり、要求を表現するときに用いられる。ShallはMILスペックのセクション3,4,5で多用され、セクション1,2、6では用いられない。即ち、スペックの要求者はその気持ちをShallに託して、Shallに続く動詞を強調するために用いているのである。このShallの日本語訳は「するものとする」である。 即ちShallが使われる条項は「Mandate(命令や強制の意)」のもとでRequirement(要求の意)されている」ということを理解すべきである。

 民間スペックの場合はShallは基本的に使用しない。使用されるのは強制ではない言葉のShouldやMayである。これらは「強制されない」条項として使用され「することができる」と訳される。これらの言葉の違いは要求や信頼性試験、受け入れ検査項目での解釈が大きく異なってくることを知らなければならない。
 
 
■MILスペックに対するわが国ユーザの意識改革

 厳格で、且つ強制的なMILスペックの内容に不明な点がある場合、また誤記あるいは修正を必要とする部位が見つかっった時は必ずスペック担当者に確認することが求められる。見過ごすことは後々命取りになりかねないからだ。またMILスペックの記述には誤植や不注意なミスがあることも知っておくべきである。これらの場合、多くはDODが迅速に修正し再公表しているが、ユーザからの指摘に対しては素直に感謝の意を表明している。

 弊社では今までに数百件に及ぶこれらMILスペックの不具合点や誤植、またユーザにとっての技術的な解釈をサポートしてきた。これらユーザは多くの指摘や疑問、あるいは質問を投げかけており、こういったことがユーザ自らに還元することでコスト削減や工数の削減、しいては契約価格の見直しや改善提案につながり多くの評価と賛辞を得ている

 ただこのような事例はまだ限定されており多くのユーザはMILスペックを昔からの固定概念で捕らえているようだ。国民性の違いもあるが米国は常により良いMILスペックを作るためには多くのユーザの見解や指摘を求めている。


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