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2009年07月01日

TIER2への道

わが国防衛装備品を世界市場へ
わが国とNATOの繋がりはそれほど古くは無い。それまで米国一辺倒であったわが国の外交・防衛政策は、米国の仲立ちもあって2007年にわが国首相として始めて当時の安倍首相がNATOを正式訪問したのが大きな転機であっったといえよう。防衛標準化や兵站の世界では米国は既にNATOとの共有体制を完了させており、わが国も複眼的に政策を見つめる必要がある。特に兵站情報分野においては今後米国のFLISとNATOのNCSが益々重要視されることは間違いない。【DCメール】 2009年7月1日 No.248


 わが国は現在NATOのTIER1(ティア・ワン)国になるべく研究がなされている。しかし米国もNATOもわが国がTIER1はもちろんのこと、TIER2(ティア・ツー)国になることを望んでいる。TIER2国になるとどうなるのか。本誌では近未来的にTIER2国のあり方とその道のりを紹介する。
 
 
TIER2への道

 TIER2の世界といってもわが国ではなじみが薄い。何を言っているのかわからない読者も多いことであろう。そこで、ここではわが国がTIER2国として自国の膨大で高品質な装備品を世界に提供することができる時代になることを想定として話を進めよう。
 
 
急速に拡大するNATO装備品データベース

 今NATO装備品システム(NCS)は世界最大の装備品データベースとして、世界38カ国、3300万種類のメーカー装備品が収録されている。NATOによればこれはまちがいなく、世界最大の製品データベースである。しかし残念ながら、わが国の装備品は正式はエントリーされていない。(ここで正式にと付け加えたのは、わが国の企業が自主努力で海外エントリーしているからである。詳細は下段参照。)そして今後はさらに国連( UN )が加盟し、また未加盟国を巻き込み、また装備品以外の製品分野もを取り込む壮大な計画があるという。そのためには参加国はNATOの定めるTIER1,TIER2の整備能力を構築しなければならない。わが国はこの分野において10年は遅れているといわれる。その最大の理由はわが国の場合装備品をNCSに登録するためには「政治的な判断」が伴うからである。装備品は膨大且つ細かい。まさに鉛筆からミサイルまでを識別化した装備品体系(FSC)である。それを一言で武器輸出に喩えるような時代感覚ではとてもなし得ない。現在、わが国は徐々にであるが、NATOに参加する方向となっているが、それでもTIER2への道は長く、険しい。
 
 
まずは13桁のNSNを知ろう。
 
 欧米ではNSNはロジスティックスのDNAと言われている。米国のFLISを発信源とし、NATOのNCSを席巻したこの「13桁のDNA」は世の中の全てを識別する素としてすでに世界の全ての先進国そしてBRICSを含む発展途上国の50カ国余りが参画をしている。わが国ではこのNSNに対する取り組みが遅れており、今後法整備の元、改めて現在世界で共有されているNSN体系の取得が求められるのは必至であろう。(NSNの詳細については弊社の別資料を参照ください。)なお、これらNSNを装備した米国のFLISはWebFLIS,NATOのNCSはNMCRLという運用ツールがあり、これによりユーザはあらゆる装備品の仕様、性能、代替品、メーカ情報、などを入手することができることはご存知の通りである。(WebFLISやNMCRLの詳細については別資料を参照ください)
 
 
27カ国でNSN登録。流浪する国産装備品。

 ところで前出したように、NATOからこのNCSにわが国の装備品がかなり存在していることがわかった。現在NCSに登録されているわが国の装備品が参照できるNSNは、27カ国のNCBで8万2千件にもおよぶとのことである。もっともこの数はNCSに登録された世界のNSN1600万件の0.5%でしかない。しかしどうして装備品登録ができるのかと訝しがる人がいるかもしれないが、実はこれらの企業は他のNATO加盟国のNBC(登録機関)を通じて登録しているのである。(わが国には残念ながらNBCはない。)具体的にいうと米国やフランス、あるいは韓国やオーストラリアに在するわが国装備品メーカは当該国のNCBを通じて自らが製造した装備品をNCSに登録しているのである。当然ながら事前に企業コード(NCAGE)の取得をしなければならないが、輸出業務や海外進出をしているわが国の装備品メーカのほとんどは取得済であろう。それよりもこのようにしてわが国で登録できない装備品が他国で登録されている現状はまさに「流浪の民のごとし」で、早くわが国で登録できる状況を構築しなければならない。
 
 
ところで日本はどうなっているか。
 
 ところで米国やNATOでは日本は集団的自衛権の解釈問題など、政治的な意味合いでNCSに参加表明はしていないと報じられてきた。しかしこのことが輸入装備品の不当価格問題の遠因となっていることは意外と知られていない。もし日本がNCSに参加していたなら、また自らのNBCが管理を行なっているなら、このようなことは起こりえないからだ。結局、世界はすでに装備品ビジネス(生産から廃棄まで)はお互いに多国間で共有・管理されたものとなりつつあり、わが国のように複数の管理監督省庁(例えば、防衛、外務、経産、国交省)の狭間で埋没しているものとは大きく異なる。またわが国の装備品登録を自らが行なえないことが、わが国装備業界が孤立し、育たない遠因ともなっていることが大問題である。このことはわが国の秀逸な資材や部品、需品などの装備品の世界市場でのビジネス機会損失を意味し、逆に高額で、品質や納期に問題の多い他国品を購入しなければならない背景となっている。わが国は装備品というと単純にエンドアイテムとしての武器類を連想するが、FLISやNCSの世界では1600万種類あるNSNの、またその下にある3300万種類の製品のほんの一部でしかない。大多数は素材であり、電子部品であり、機構部品であり、そしてまた需品なのである。
 
 
TIER2になるための道のり
 
 まずTIER1とTIER2の違いについて紹介しよう。TIER1 はエントリ・レベルとしてNCSシステムへの理解と運用が認められるレベル。いわゆるNATO参加資格者にはすべて与えられるレベルである。現在TIER1国の多くは自前で装備品製造が伴わない国か、また今後TIER2を目指す国もある。TIER2 はNATOが審査して他の諸国と同様にNCSシステムの共有と自国装備品の登録が認められる。例えばシンガポールのようにTIER2レベルになるとNCSを通じて他国から代替品調達の機会が訪れることになる。同国は自国内にNCB(国家カタログ委員会)を運営しNCS規定に基づく装備品登録管理を している。例えばこの国ではMMD(Materiel Management Data:装備品管理データ)を策定し、登録業者との間でMMD契約を運用している。このMMD条項は業者との間でカタログ作成や供給管理、調達に取り組む全体的なパッケージとして大いに役立っている。
 
 
MMD契約条項の例

 ①登録業者はプロジェクト管理チーム(PTM)当局に装備品データの初回登録のXXか月前に指定された装備品・管理・データを供給するものとする。

 ②登録業者の装備品・管理データが要求に応じていない場合、当局は相手先にその旨を通知する。業者は当局に対してXXか月以内に装備品管理データを修正し再度供給しなければならない。 業者はすべて提供したメーカ部品番号およびNSNが装備品管理データの下で一致していることを保証しなければならない。

 ③業者は保証期間中、当局に装備品・管理の設計修正あるいは部品番号変更 などの最新情報を提供しなければならない。

 ④供給物品にNATO/NSN番号がない場合、業者は(i)、必要なカタログ・データ(技術図面や仕様書) あるいは等価な文書を新規コード化のために初回品納入のXXヶ月前にNCBに提出するか、(ii)、当局の指示に従い、XXヶ月前にNCBにコード化情報を作成するための物品を提供しなければならない。
 
 
NCB設立の手順の例
 
 DLIS(米国防兵たん庁)によるNCB設立の手順書はわが国にとって非常に参考になる。NCB設立には次の8ステップが必要であるとされているからだ。

 ①NCBの必要性に精通し、その手順や利益についてはっきりと意志決定者に説明すること。そのためにはコア・チームを結成し、また広く見聞を広めることが必要である。

 ②NCB設立のために意思決定者(Senior Decision Maker)の承認が重要である。また関連機関の支援や協力は欠かせぬものなる。

 ③NCSの概念、技術要求、実施に対する深い理解が重要である。そのためにはNATO諸国のNCBへの視察や訓練に参画することが望まれる。

 ④現実的なカタロギング手法やライフサイクルにおける装備品データの運用等の分析が必要となる。ワーキンググループの結成や識別手法の文書化が望まれる。

 ⑤具体的かつ詳細な実施方法の具申と承認。装備品の必要度合いや在庫などの観点から具体的なNSNの割り当て作業が必要となる。

 ⑥法的責任機関としての設立準備。法的責任を明示したNCB組織の設立がなされなければならない。
 
 ⑦変更手順の識別と確立。カタロギングの役割や要求を明示するための文書や機能ダイアグラムの設定や変更。

 ⑧NCBインフラと目標設定。NCS利用開始に先立ち、効果的な運用のためのBASELOGプログラムの活用。

 しかしながらDLISはこうも言っている。大切なことはこのプロジェクトを承認できる意思決定者を探し出すことから始めるべきである。


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