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2009年05月19日

世界から取り残される日本(続編)

急速に広まるグローバル・ロジスティクス(兵站)の世界 
 今回はDCメール237号(2009年1月15日号)で紹介した「急速に広まるグローバル・ロジスティクス( 兵站 )」を補填しながら、改めてわが国が米国のFLISやNATOのNCSの導入について検討していることをお知らせする。弊社はこれら米国やNATO担当機関からの正確な情報を元に、わが国のロジスティックス・システムが世界の潮流から取り残されることなく、また一日も早く世界各国と肩を並べる日が来ることを期待するものである。【DCメール】 2009年5月15日 No.245 


AN.245-1
■価格だけが問題ではない。

 昨年11月、会計検査院が装備品の輸入価格算定に新たな指摘をしたことで、防衛省はもちろんマスコミ各社もFLIS( フリス)米国連邦兵站情報システムやそのインターネット版であるWeb FLIS( ウェブ・フリス )を始めて取り 上げたことはDCメール237号で紹介した通りである。改めて言うまでもなく、今や世界のロジスティックス情報システムの潮流はNCS( NATO Codification System )を取り込むことにあるとされている。このNCSは米国のFLISを原流としており、NATO加盟国はもちろん、非加盟国である隣国、韓国なども既にTIER2国として加盟国と同等の兵站情報システムの運用に力を注いでおり、他のアジア諸国の模範として大いに活躍しているのが現状である。

 これは最近耳にした話であるが、現在わが国が輸入する代替装備品に韓国製品が多く見受けられるようになってきた。これはまさに韓国はそのために10年以上の月日をかけて、TIER2国として世界中の国々の装備品需要に対応することが可能になってきたと認めざるを得ない。TEIR2国とは自らの製品や部品を世界の装備品市場に供給することができるからだ。あの米国がFLISをもってして膨大な装備品輸出を行なっていることは誰もが認めるところである。そこに韓国も参加し始めたわけである。否、NATO諸国はNCSをもって自国の装備品登録を行い、自国需要はもとより、対外的に競い合っているのが現状である。

 しかし、今のわが国がこのようなレベルになるためには少なくとも10年はかかるといわれる。残念ながらわが国は多くの装備品メーカーを抱えているにも関わらず、この現状を甘受するしかない。少なくともいままでこのような事態を放置してきたツケは今後、益々重くのしかかってくることは必至である。

 わが国はいまだにNCSに参加していないのでまずはTIER1国として各国との情報共有をすることが先決であるが、わが国の優秀な装備品を海外に提供することができるTIER2レベルとなると、そうは簡単ではない。防衛省を中心とした官民一体のシステム統合、カタログ品登録、審査、各国との連携などいわゆるNCBの設立が要求されるからで、簡単ではない。しかしすでに世界の主要諸国を含む56か国のLIS(ロジスティック情報システム)が確実に統合化し、一元化しつつある現在、これ以上日本が取り残されることが、将来どのような問題を引き起こすことになるのかを十分に検証しておかなくてはならない時期に来ている。

  注:なおここでいう装備品とは一部の武器輸出3原則に抵触するようなものは省かれる。またFLISやNCSの装備品の概念はNSNからわかるとおり、需品から半導体部品 に至るまでの広大な範囲の品目と膨大な種類に渡るものとされている。 
 
 
AN.245-2
NATOはしっかりと見ている。

 2007年1月12日、わが国の元首(安倍元首相)としてはじめてNATO訪問をして、以下のような演説(外務省訳)が行われたが、NATOはここで述べられた内容についてはしっかりと覚えていることを肝に銘じておくべきである。

(前文略)
日本とNATOは協力の新たな段階へと移行するべきだと考えます。私の指示に基づき、日本政府は、既にNATOとの今後の更なる関係強化に向けての基礎固めを始めています。平和構築、復興支援、災害援助等の分野で役立つような知識と経験を共有する余地はたくさんあります。
(中略) 
目の前にある課題はあまりに大きく、日本とNATOが別々に行動するような無駄は許されません。これまでの努力の成果の上に立ち、平和で安全な未来を作るため、ともに働こうではありませんか。
 
 
 もちろん、この演説はロジスティックス分野について明確に言及しているわけではないが、NATOロジスティックス関係者らははっきりとわが国の意思を汲み取っていることをわが国は忘れてはならない。しかし、一方ではNATOはわが国の立場を理解しようとする意図もくみ取れる発言をしている。以下はNATOの一翼としてDOD傘下のDLIS首脳がわが国の立場を表現したものである。

(前文略)
このNCSシステム(に参加すること)がプラスとなるかマイナスとなるかは、各国によるところである。たとえば日本のように、NATOとの協調が政治的問題を引き起こしてしまう可能性があり、それが、正規メンバーになることへの障害となっているとも思われる。また一方で、ブルガリアのようにNATOとの協調が推進力となっているケースもある。(後略)

First, there are the efficiencies that the NCS brings to logistics; and, second, there is a plus or a minus depending on the nation.For example, for Japan the association with NATO could pose some political issues and that might serve as an obstacle to formal membership. On the other hand, for Bulgaria, the NATO association is a driving force.
 
 
AN.245-3
結局のところ、米国もNATOもわが国の出方を待っているのが現状である。

 2007年5月1日にワシントンで開かれた日米外務・防衛担当閣僚、いわゆる2プラス2による記者会見の席上、ゲーツDOD長官は次のような発言をして日本のNATOとの広範な協力を要請した。これを日本のマスコミは次のように報道した。

(前文略)
日米両政府は1日午後(日本時間2日未明)に開いた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で、豪州やインド、北大西洋条約機構(NATO)などとの協力を強化する方針を確認した。4閣僚は会議後、共同記者会見し、麻生太郎外相は北朝鮮情勢などに対応するため「日米と豪州、インドなどアジア太平洋地域の協力強化が重要だ」と指摘。ゲーツ国防長官は「日本とNATOとの広範な協力を実現する手段も模索していく」と述べた。

The four leaders also discussed the importance of strengthening ties to other countries, such as Australia, and achieving broader cooperation between Japan and NATO, Gates said. Aso noted that today’s meeting also provided an opportunity for the U.S. leaders to reaffirm their commitment to defending Japan and deterring possible threats.
(American Forces Press Service)
 
 
 ここでDOD長官の「achieving broader cooperation between Japan andNATOを日本のマスコミでは「「日本とNATOとの広範な協力を実現する手段も「模索していく」と報道したが、言葉(achieving)のうえではもはや「模索」の段階を超えて、「達成」する段階に入っていることを読み取る必要があるのではないか。事実日本政府の公式声明文(和文)では以下のとおり「達成」するとしている。

(前文略)
北大西洋条約機構(NATO)の平和及び安全への世界的な貢献と日米同盟の共通戦略目標とが一致し、かつ、補完的であることを認識しつつ、より広範な日本とNATOとの協力を達成する。
 
 
AN.245-4
そもそもグローバル・ロジスティックス情報システムとはなにか。

 ここで改めて世界の主要国が運用を表明しているNCSとは何かを改めてそのパンフレットから紹介しよう。NCSは米国製のFLISのグローバル版ともいえるが、その情報には参加国のみが運用できる非公開情報が含まれている。NCSに参加する諸国は、共通の基準と技術に従って自国の防衛カタログ品目にNSNを割り当てる。

 各国のコード化事務局( NCB )はすべての品目にNSNを割り当て、同じNSNの品目はすべて構成、構造が同じように同一性がなされている。NATOのNSNは米国のFLISと同じ13桁の数字によって表わされており、また国別表示がなされている。現在、約700万件の米国NSNと約900万件のNATO諸国等のNSNによって構成されており、その品目はプロペラ・ブレードから宇宙船、および石鹸入れから洗濯機まで広範囲となっている。NATOによればこのNCSには既に56カ国が参加しており、参加各国は装備品の取得のために当システムを運用するだけではなく、自国の装備品を登録することに傾注しているという。

■TIER1( ティヤワン )とTIER2( ティアツー )とは

 簡単に言うとTIER1とはエントリー・レベルを指しており、NCSシステムの理解と使用が認められ、TIER2とはTIER1国を審査したうえでNATO諸国と同様にNCSシステムの運用、すなわち自国でNSN登録が認められることをいう。TIER1とTIER2ともに非NATO国としてNATO委員会( AC/135 )による審査のうえ正式承認が必要となる。ちなみにアジアのTIER2国はアメリカ カナダを除くと、現在オーストラリア、韓国 シンガポールおよびニュージーランドの4カ国でこれらの国々では自国の装備品も含めたNCSデータベースの運用を行なっている。
 
 
AN.245-5
ところで日本はどうするのか。

 ところで日本は集団的自衛権の解釈問題など、政治的な意味合いでNCSに参加表明はしていないと海外では報じられている。しかしこのことが今回指摘された輸入装備品の不当価格の遠因ともなっていることは意外と知られていない。もし日本がNCSに参加していたなら、各国協調の中でこのようなことは起こりえない。またそのうえ将来にわたり日本の装備品が登録できず、当業界が育たない原因ともなっていることはほとんどの関係者が知らないことである。このことはわが国の秀逸な資材や部品、需品などの装備品の世界市場での運用機会損失を意味し、逆に高額で問題の多い他国品を購入しなければならない背景となっている。

 現在AC/135( NATOのNCS委員会 )によればNCSへの参加国は急増しており、地域的にはアジア・アフリカ諸国を中心に全世界を目指しているという。また現在においても世界最大のデータベースであると自負しているが今後装備品の概念を拡大することで民生品の取り込みも考えているという。また国連( UN )の取り込みも検討されていると報じられている。わが国の装備品は多くのレベルにおいてTIER2を数年で獲得できる実力があるだけに早期に解決すべきであるし、また産業界にとっても大いに期待されるものとなろう。現在、日本の兵站関係者は日米同盟を軸に展開を検討しているふしがあるが、このような世界の潮流を見失うと将来にわたって禍根を残すことになる。

 日本においてはFLISやNCSはもとより兵站( または後方支援 )は地味であるがゆえにマスコミも含めて知られていない部分が多い。しかし昔から兵站を制するものが生き残るとはもはや定説になっていることを忘れるべきではない。


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